大使館便り第111号(平成24年6月)

平成24年6月1日

平成24年 6月 1日
在ポルトガル日本国大使館

 

1.四宮大使からのメッセージ

 

6月、先月半ばまで続いた涼しい気候のためか、例年よりだいぶ遅れて、リスボンの街路樹に青紫のジャカランダの花が目立つようになりました。郊外でも色とりどりの草花が、春の陽光に輝いています。魚市場で見かける旬の鰯も大ぶりになり、市内のあちこちで、この魚を焼く香りが漂う季節となりました。

 

この爽やかな季節とは裏腹に、先月初めのギリシャ総選挙の結果、ユーロ危機がまた深刻さを増し、世界経済に暗い影を投げかけています。当地から彼の国の混迷ぶりを見るにつけ、同じくトロイカの財政支援を受け、厳しい緊縮策を進めながらも、国内の反応が異なるポルトガルとの相違を感ぜずにはおられません。これも畢竟、国民性の違いということなのでしょうか。

さらに、先月フランスで社会党の大統領が誕生し、財政規律を重視するこれまでの政策に成長戦略をもっと加味すべし、との論調がEU内で強まってきたのは、ここ一月余りの変化です。ポルトガルでも、緊縮策による負担増や若年層で殊に深刻な失業の増大などで、緊縮一辺倒の施策では将来への希望が持てず、そもそも経済政策として片手落ちではないのか、との批判も強くなっています。

ポルトガルは、厳しい財政規律を規定した「EU財政協定」を、他の加盟国に先がけて4月に批准しています。政府の緊縮策や構造改革に関するトロイカ側の定期審査では、今回も当国の努力をおおむね評価する結果となる見込みです。労組などの反対運動も、引き続き穏健な状況です。しかし、最大野党の社会党はEU内での論調の変化を反映するように、右「財政協定」の批准に加えて、成長戦略も重視するよう政府に求める文書の採択を国会で要求しています。これには世論の支持も、小さくないように見えます。

 

他方、経済の現状は、観光業が引き続き好調なのに加えて、月例の貿易統計がこのところ貿易赤字の縮小を示しているのは、当国にとり幸いなことです。しかし、付加価値税などの税率引き上げによる税収増の効果はまだ見えていません。また、たとえば高速道路の利用者数が減少したり、小売業や飲食業の関係者から悲鳴の声も聞こえるなど、全般的状況は容易でありません。

今月16日にギリシャ議会の再選挙があり、またフランスの新政権やドイツ政府の出方、さらにスペインの経済状況など、ユーロ危機の展開も不透明です。この中に身をゆだねるポルトガルが、あまり運命を翻弄されないよう祈りたいと思います。当国の正念場はまだまだ続きそうですが、引き続き注意深く動向を見ていきたいと思います。

 

先月は、徳島市と姉妹都市のレイリア市で、市制467周年の記念式典があり、訪問して来ました。この機会に、先月東京と徳島を訪問したレイリア市長から訪日の感想をお聞きしました。同市長は帰国直後で時差が消えていないと言いながらも、日本で大変な歓迎を受け、同行した同市の企業、教育関係者共々大変満足しているとのことでした。特に、経済面で交流の進展があったこと、徳島大学と地元の高等技術学院との交流協定を結べたこと、モラエスの業績をポルトガルでさらに紹介するため、徳島の友好協会や徳島市と協力する話が進展したことなど、記念式典の挨拶でも訪日の成果に言及していました。今後もこのような地方自治体の交流に、当館としても支援を続けたいと考えています。

 

当地では、寒さと暑さが交互に訪れる不安定な気候が続きましたが、これからは初夏の陽気が多い季節となって行くでしょう。

皆様には、時節柄ご自愛のほどをお祈り申し上げます。

 

 

 

2.大使館からのお知らせ

 

(1)総政務・経済班からのお知らせ

 

【コエーリョ首相の欧州理事会非公式会合出席】

 

コエーリョ首相は、欧州理事会非公式会合(23日)への出席後、「極めて活発で有意義な議論が交わされた。欧州連合(EU)及び欧州理事会の目的は各国首脳らの考えを画一なものとするのではなく、欧州発展のために十分なコンセンサスを作り出すことである」と述べました。注目を集めている、ギリシャのユーロ離脱の可能性については、今回取り上げられなかった旨明らかにしました。また、ユーロ共同債の発行に関し、ポルトガルは同アイデアに原則反対の立場ではないが、現在の債務危機への解決策とはならず、財政・経済・政治的統合を一層進めていく中で考えられていくものと述べました。

 

 

【カヴァコ・シルヴァ大統領のアジア訪問(19~28日)】

 

カヴァコ・シルヴァ大統領は10日間に及ぶアジア訪問で、東ティモール、インドネシア、オーストラリア、シンガポールの4カ国を訪れました。ポルトガル語圏諸国共同体(CPLP)加盟国である東ティモールでは、ルアク新大統領の就任式や独立10周年記念式典等に出席し、同国のASEAN入りを強く支持する旨述べました。また、ポルトガルの大統領として初めて訪問したインドネシアでは、ユドヨノ大統領と会談を行い、対東ティモール支援で協力関係となったことを歓迎した他、両国間の貿易関係促進、投資の誘致について話し合いました。続く、オーストラリアでは、キャンベラ近郊の国立公園でコルクガシ植樹を行い、世界一のコルク生産を誇るポルトガルと良質のワイン産地オーストラリアは良きパートナーであると述べました。さらに、ポルトガル人コミュニティー訪問、ギラード首相との会談を行いました。また、最後の訪問地シンガポールでは、トニー・タン大統領及びシェンロン首相と各々会談した他、経済フォーラムで演説を行い、投資の誘致に加え、シンガポール人留学生の受入にも触れました。なお、シンガポール国立大学とリスボン新大学との間で,経営及び海洋分野における研究協力を目的とした覚書きの署名も行われました。

 

 

【欧州委員会(EC)による2012年春季経済見通し】

 

欧州委員会(EC)は2012年春季経済見通しを発表し、ポルトガルの本年におけるGDP成長率を▲3.3%(前回▲3.0%)、失業率を15.5%(同13.6%)へ各々修正しました。さらに、財政収支についても▲4.7%へ下方修正しましたが、トロイカ合意の目標値▲4.5%は引き続き有効であり、政府には厳しい予算執行が求められるとしています。なお、ポルトガル経済の主な指標は下表のとおりです。

 

 

  2011年月

  2012年

  2013年

GDP成長率

▲ 1.6

▲ 3.3

0.3

失業率

12.9

15.5

15.1

貿易収支

▲ 7.2

▲ 4.2

▲ 3.4

経常収支

▲ 6.5

▲ 3.6

▲ 2.9

財政収支

▲ 4.2

▲ 4.7

▲ 3.1

政府債務

107.8

113.9

117.1

 

(注)経常収支、財政収支、政府債務は対GDP比、それ以外は前年比。単位(%)

 

 

【2012年第1四半期(1~3月)の失業率】

 

国立統計院(INE)は2012年第1四半期の失業率を発表し、14.9%(前年同期比2.5ポイント増、前期比0.9ポイント増)で過去最高となり、若年失業率(15~24歳)は36.4%(同8.4ポイント増、0.8ポイント増)に達しました。

政府は失業問題の解消に向け取り組んでいるとしていますが、失業率上昇による社会保障制度への圧迫に懸念が示され、政府やトロイカ等に警鐘を鳴らす論評も見られます。

 

 

 

(2)広報・文化班からのお知らせ

 

【「Festa do Japão 2012」の開催】

 

昨年に続き、ベレン地区の日本公園において、下記の通り日本文化紹介イベント「Festa do Japão」が開催されます。生け花、折り紙、書道、俳句、コスプレ、武道演武、日本食屋台、縁日風日本の遊び他様々な催しや日本企業における製品展示が予定されています。また、今年は和太鼓、三味線も登場し、お祭気分を盛り上げてくれます。盆踊りも用意していますので、お持ちの方は浴衣姿でお越し下さい。詳細については、下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:6月2日(土) 16:00~23:00

会場:日本公園(Jardim do Japão em Lisboa)

住所:ベレン地区、Museu de Arte Popular隣

入場料:無料

問い合わせ先:213 110 560 / cultural@embjapao.pt(大使館広報文化班)

         大使館ホームページ

 

 

 

プログラム(予定。都合により変更の可能性あり)

 

 舞台イベント

  16h00∼ オープニング(和太鼓・三味線)、主催者挨拶

  16h30∼ 武道演武

  17h30∼ 盆踊り

  18h00∼ コスプレ

  18h30∼ 日本○×クイズ

  20h30∼ Fernando Tordo, Filipa Pais e Carlos Mendesによるミニコンサート―Memorial―

  21h00∼ 和太鼓・三味線演奏

  21h30∼ 盆踊り(和太鼓伴奏)

  23h00∼ 終了

 

 テントイベント

  16h30∼ 生け花

  17h15∼ 俳句

  17h45∼ 切り紙

  18h30∼ 風呂敷

  19h15∼ 書道

  20h00∼ 折り紙

 

 日本食屋台

  寿司、たこ焼き、どら焼き、カレーうどん、日本酒、日本ビール他

 

 企業展示

  乗用車、バイク、マリン製品他

 

 

【日本政府文部科学省奨学金留学生募集】

 

日本政府文部科学省によるポルトガル人を対象とした奨学金留学生(2013~2015年度)を募集しています。詳細については、以下のサイトをご覧いただくか、日本大使館広報文化班(21-311-0560)までお問い合わせ下さい。

 

-https://www.pt.emb-japan.go.jp/estudarnojapao.html#bolsas

 

 

 

(3)領事班からのお知らせ

 

【スリ、ひったくり未遂事案の発生】

 

5月下旬、マルケス・デ・ポンバル広場周辺において、日本人がスリやひったくりの被害に遭いそうになる窃盗未遂事案が相次いで発生しています。

親切そうに声を掛けてきたり、時間を訊いたりして近付いてくる場合もあるようです。

バッグ等の所持品は「たすき掛け」にし、体の前で持つ等して盗難被害に遭わないよう十分注意をしてください。

 

 

【E-mail登録のお願い】

 

インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録ください。

E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取りになれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。

 

 

【在留届に関するお願い】

 

近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。

当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。

 

このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。

 

また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。

 

 

 

(4)その他

 

【当館領事業務へのご意見募集】

 

当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。