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平成25年 8月 1日
1.四宮大使からのメッセージ
8月、リスボンは真夏です。先月も日差しは強烈でも乾燥した日が多く、蒸し暑い日は限られていました。学校も休みに入り、観光客の増加と反比例して、休暇でリスボンを離れる市民は増えています。経済が不況で、夏休みの出費を抑える傾向は昨年以上とみられますが、比較的物価の低いポルトガルには、他の欧州諸国などから観光客が増えているようです。
先月は月初めから3週間以上、政治面での激震が続きました。 発端は、緊縮策を担ってきたガスパール財務大臣の突然の辞任です。同大臣は能吏として評価は高いものの、負担が多い国民からは怨嗟の的になっていました。野党だけでなく与党内からも、国民への説明不足など対応振りが批判されることもありました。緊縮予算の一部が二度も違憲判決を受け、緊縮策の見直しを迫られたこともあります。私的な外出の際に、民衆から罵声を受ける経験もあったようです。何度か辞意を漏らしたそうですが、今回は受理されました。 辞任の翌日、アルブケルク財務副大臣の昇格が発令されました。ところがこれに対し、連立与党の党首でもあるポルタス外務大臣が、ガスパール路線の継続に反対して辞意を表明したのです。外相は、緊縮策だけでなく、成長や雇用をもっと重視すべしとの立場です。連立与党の分裂、政権の行き詰まりから国会の解散、総選挙の可能性が一気に高まりました。世論調査では野党社会党への支持が与党を引き離しており、野党は総選挙を求め、政変の可能性が現実味を帯びる事態となりました。金融市場では緊縮策の行方が懸念され、ポルトガル国債の価格が急落(利率が上昇)し、欧州経済に再び不安がよぎったのです。 ところが、外相は自分の政党(民衆党)の内部から辞意表明を批判され、またコエーリョ首相も時間を掛けて強く慰留に努めました。危機感を持った各界からも妥協を求める働き掛けがあったようです。そこで、ポルタス外相は新財務大臣の任命を認め、自らは外相を辞し、トロイカとの交渉や経済・社会制度の改革などを統括する副首相に昇格することで、連立政権を継続する妥協案が成立しました。当面の政局は収拾されたやに思われたのです。 しかし、右妥協案に対しカバコ・シルバ大統領がこれを了承しませんでした。大統領は、与党(社民党、民衆党)および最大野党(社会党)に対し、「国家救済のための新たな合意」を求める声明を発表しました。政治危機でトロイカ合意の実施が頓挫するのを回避し、国際金融市場への復帰(自力での資金調達)を実現できる政治協力を求めたのです。具体的には、トロイカ支援が終了する明年6月をメドに総選挙を実施し政治体制を再構築すること、トロイカ合意を完遂できるよう「財政再建プログラム」を見直すこと、および総選挙後の政権が目指すべき共通の方針について、三党間で合意することでした。 政局を振り出しに戻すような大統領の声明は、大方の予想に反したもので、驚きをもって迎えられました。しかし、三党間の協議は行われたものの、結局「三党の合意」は実現せず、大統領は連立政権が任期満了まで継続することを次善の策と認めるに至りました。その後、首相は外相との合意に沿って内閣の一部を改造し、また政府自身の「信任決議」を国会で採択させて、政局劇はようやく終焉に向かったのでした。 この政局は国民の不満が背景にあったとはいえ、終わってみれば国民不在の争いだったようにも思われます。国内の政治的混乱はとりあえず収拾され、トロイカ合意の基本方針は維持されました。しかし、国民負担が増す中で、財政再建は目標の3分の2まで達成したといわれながら、肝心の財政赤字の目標達成は今年も容易でなさそうです。今後、ポルタス副首相の調整で、緊縮政策に修正が出るのでしょうか。また、トロイカ合意自体の再修正や支援終了後の追加支援について、トロイカと折衝が行われるのでしょうか。この国の行方は、世界経済の動向や最大の支援国ドイツの対応(来たる9月のドイツ総選挙の結果)にも依存する不安定な状況で、これからも目が離せません。
他方、先月は日本企業15社の代表の方々が「経団連のミッション」として当国を訪問されました。ポルトガル政府の強い要請に応え、また3月にポルタス外相(当時)が企業関係者とともに訪日したのを受けての来訪でした。一行は大統領、首相と会見し、さらに外相の昼食会、経済副大臣の朝食会に招かれたほか、AICEP(投資貿易振興庁)の経済セミナーで当国の企業関係者と意見交換を行いました。政局のただ中で多忙を極めていた当国の要人方ですが、日本の投資誘致や共同事業の可能性について、それぞれ予定の時間を大幅に超えて熱心にお話されました。当国首脳の熱いメッセージを受けて、やがて具体的な新規事業が結実していくよう、大使館でも引き続き協力したいと考えています。
また、先月初めに大使館は、当国の「葡日友好議員連盟」の協力を得て、国会議事堂で「日本酒の講演と試飲の会」を催しました。外相が辞任表明した当日にあたり、国会でも政治の動きが活発なときでしたが、シルバ国会副議長やフラスキーリョ「友好議連」会長を始め多くの国会議員や一般の方々が来訪されました。日本食は当地でもブームですが、まだ本物に出会える機会は多くありません。まして日本酒は、詳しく知られていません。このような中で、日本から派遣された専門家が説明を行い、各種の日本酒を試飲した今回の「日本酒の会」は、日本の食文化を本格的に紹介する事業として大変好評でした。大使館では、今後とも質の高い文化紹介に努めていきたいと考えています。
暑い日が続きますが、皆様におかれてましては、ご自愛のほどをお祈り申し上げます。
2.大使館からのお知らせ
(1)政治・経済関係
【衆議院欧州経済財政事情等調査議員団のポルトガル訪問】
7月29日、ポルトガルを訪問の衆議院欧州経済財政事情等調査議員団(団長:山本有二衆議院予算委員長)一行は、コスタ中央銀行総裁、ジョルジュ財務副大臣と会談しました。会談では、一行は、ポルトガルの経済及び財政状況並びに財政危機への対応等について、コスタ総裁等から説明を受けました。
【経団連訪欧ミッションのポルトガル訪問】
7月13〜16日、経団連訪欧ミッション(共同団長:横山進一ヨーロッパ地域委員会共同委員長(住友生命保険会長)、小林喜光同共同委員長(三菱ケミカルホールディングス社長。一行21名))がポルトガルを訪問しました。 同ミッション一行は、カヴァコ・シルヴァ大統領、コエーリョ首相を表敬し、ポルタス外相主催昼食会、アルヴェス経済副大臣(起業・競争・イノベーション担当)主催朝食会、ポルトガル投資貿易振興庁(AICEP)主催の「日本・ポルトガルビジネス・フォーラム」に出席し、二国間の経済関係の強化等につき意見を交換しました。 今般の経団連訪欧ミッションのポルトガル来訪は、去る3月のポルタス外相の日本公式訪問のフォローアップの流れの中に位置づけられる重要な訪問でした。日ポルトガル交流470周年の本年に実現した今般の訪問により、両国間でのビジネス交流が一層活発になって行くことが期待されます。
【ガスパール財務相辞任に端を発する政局と内閣改造】
7月1日、ガスパール財務相は国内経済情勢の悪化等の責任を取り辞任、翌2日に後任人事(アルブケルケ国庫担当財務副大臣の財務相昇任)に反発したポルタス外相が辞意を表明しました。続く6日、連立与党(社会民主党(PSD)と民衆党(CDS/PP))は政治的安定に向け内閣改造を経て財政再建を図る旨合意しましたが、10日、カヴァコ・シルヴァ大統領は最大野党・社会党(PS)を含めた三党による救国合意を要請、14日から19日にかけて三党協議が行われました(18日、野党・緑の党(PEV)による内閣不信任案の提案がありましたが、議会で安定多数を確保する連立与党により否決されました)。 しかし、19日夜、社会党(PS)のセグーロ書記長は三党の救国合意が不成立に至ったことを明らかにし、翌20日には連立与党の各党も合意不成立を発表しました。これを受け、21日、カヴァコ・シルヴァ大統領はTV演説を通じ、一連の政局が収束するよう、コエーリョ現政権の任期満了(2015年半ば)までの継続が最善の代替策であると述べました。 23日夜、大統領府からポルタス外相の副首相昇任、マシェッテ新外相らの入閣・一部省庁の所掌再編に関する内閣改造が発表され、翌24日夕、大統領府にて閣僚就任式が行われました。今般新たに3人が入閣した一方、これまで経済雇用大臣を務めてきたサントス・ペレイラ氏が内閣から去りました。今回の内閣改造により、大臣ポストは14(2011年6月の政権発足時は11)となっています。また、26日には副大臣の就任式も行われました。
●副首相(新) パウロ・ポルタス(前外務大臣) (Paulo Portas) ●外務大臣(新) ルイ・マシェッテ (Rui Machete) ●経済大臣(新) アントニオ・ピーレス・デ・リマ (Antonio Pires de Lima) ●環境・国土・エネルギー大臣(新) ジョルジ・モレイラ・ダ・シルヴァ (Jorge Moreia da Silva) ●農業・海洋大臣(閣内留任) アスンサオン・クリスタス (Assuncao Cristas) ●連帯・雇用・社会保障大臣(閣内留任) ペドロ・モタ・ソアレス (Pedro Mota Soares)
【ポルトガル中銀による2013年夏期経済報告書】
7月16日、ポルトガル中銀は2013年夏期経済報告書を公表し、本年のGDP成長率について前回(春期経済報告書)の▲2.3%から▲2.0%へ上方修正しましたが、2014年については同1.1%から0.3%へ下方修正しました。本報告書によると、マクロ経済の不均衡修正が引き続きポルトガルの課題であり、民間債務の削減、銀行セクターの負債圧縮、資金調達能力の強化が重要であると指摘されています。なお、主なマクロ経済見通しは下表の通りです(単位%)。
(2)広報・文化関係
(イベント)
【日本映画祭−黒沢清監督特集】
7月号にて8月末開催の旨告知を行ないました日本映画祭「黒沢清監督特集」は延期となりました。開催時期については追って御案内申し上げます。
【輝環会(きわかい)による茶道他デモンストレーション】
茶道の普及 ・国際交流団体の表千家「輝環会」による茶道・着物・日本舞踊・琴・包丁式のデモンストレーションが、以下の通り行われます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。 日時:9月7日(土) 17:00〜19:15 会場:オリエント博物館(Museu do Oriente) 住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa お問い合わせ:21-358-5244(オリエント博物館) / info@foriente.pt URL:オリエント博物館
【建築家・藤本壮介展示「未来志向の建築」&講演会】
ベレン文化センターの主催により、著名な日本人建築家・藤本壮介氏の標記展示及び講演会が以下の通り開催されます。詳しくは下記までお問い合わせ下さい。 日時:9月10日(火)〜17日(火) 会場:ベレン文化センター(Garagem sul do Centro Cultural de Belém) 住所:Praça do Império 1449-003 Lisboa お問い合わせ:21-361-2400 (Tel.) / 21-361-2500 (Fax) / ccb@ccb.pt URL:ベレン文化センター
【第7回リスボン国際ホラー映画祭(Motelx)】
下記の日程で、「第7回リスボン国際ホラー映画祭」が開催されます。同映画祭では日本のホラー映画も上映される予定です。また、「リング」の監督としても知られ、日本のホラー映画界を代表する中田秀夫監督の参加も予定されています。詳しくは、下記までお問い合わせ下さい。
日時:9月11(水)〜15日(日) 会場:Cinema São Jorge 住所:Av. da Liberdade 175, 1250-141 Lisboa お問い合わせ:info@motelx.org URL:Motelx
【折り紙ワークショップ】
オリエント博物館において、以下の通り折り紙ワークショップが開催されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。
日時:8月27日(火) 15:00〜17:00 会場:オリエント博物館(Museo do Oriente) 住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa お問い合わせ:213 585 200 / info@foriente.pt URL:オリエント博物館
(イベント報告)
【ポルトガルにおける日本酒振興セミナー】
7月3日、日本大使館とポルトガル・日本友好議員連盟の共催により、ポルトガル国会内において、日本酒振興セミナーが開催されました。 同イベントには国会関係者他約100名が来場し、冒頭、ギリェルメ・シルバ国会副議長から開会・歓迎の辞、引き続きミゲル・フラスキーリョ・ポルトガル・日本友好議連会長による挨拶の後、四宮信隆大使から講師の紹介及び来場者への謝意が述べられました。 その後、国税庁・宇都宮仁酒類国際技術情報分析官によるスライドを用いた日本酒講演会が行われ、来場者はバラエティー豊かな日本酒の様々なカテゴリーや製法について耳を傾けながら、テイスティングを行いました。参加者からは多くの質問がなされ、日本酒への関心の高さが伺われました。
(広報文化班からのお知らせ)
【「日本語能力試験」の開催】
国際交流基金と日本国際教育支援協会の主催による「日本語能力試験」(JLPT)が下記の要領で実施されます。詳細については下記のサイトをご参照いただくか、下記までお問い合わせ下さい。
日時:12月1日(日) 会場:Faculdade de Letras da Universidade do Porto(ポルト大学文学部) 住所:Via Panorâmica, s/n, 4150-564 Porto 願書提出期間:9月23日(月)〜10月9日(水) お問い合わせ:reiko@sapo.pt(日本語能力試験実施委員会)/cultural@lb.mofa.go.jp(日本大使館広報文化班)
【2013年—日本・ポルトガル交流470周年の開始】
2013年、日本とポルトガルは、1543年の種子島における鉄砲伝来以来、交流470周年を迎えます。ご承知の通り、ポルトガルは日本と最も長い交流の歴史を有するヨーロッパの国であり、この470年にわたる両国の友好の絆を未来へ向けて一層強化し発展させるべく、この一年間、日ポ両国において様々な記念事業等を実施しています。
当館では、交流470周年に際して、「イベントカレンダー」、「イベントのご登録」をはじめとする470周年関連情報用サイトを下記の通り開設しています。随時更新して参りますので、ぜひご参照の上、皆様の幅広いご参加・ご登録、並びにご支援を賜れればと思います。また、日本・ポルトガル交流470周年ロゴマークを併せご紹介いたします。ロゴマークの使用規定につきましても下記470周年関連情報用サイトを御覧下さい。
(3)領事関係
【海外へ渡航する皆様へ(動物検疫に関する注意)】
夏休みには海外へ渡航される方も多いと思いますが、海外では、家畜の伝染病である鳥インフルエンザや口蹄疫が発生・流行している場合があります。 特に、中国等の近隣アジア諸国において、口蹄疫や鳥インフルエンザ(H5N1)等の家畜伝染病が発生しており、注意が必要です。 これらの伝染病を日本国内へ持ち込まないよう、注意すべき対策について、以下のとおりお知らせします。
動物検疫等の詳細は、下記のサイトをご参照下さい。
○ 農林水産省(空海港における水際検疫の強化について) ○ 動物検疫所(家畜の伝染性疾病の侵入を防止について) ○ 外務省海外安全ホームページ(動物検疫に関する注意)
【平成26年度大学入試センター試験】
大学入試センターでは、現在、「平成26年度大学入試センター試験」について、海外に居住する受験希望者に対して受験案内等を配布しています。 ポルトガルに居住する受験希望者については、上記受験案内を入手したうえで、志願票などを大学入試センターに送付することになります。 出願期間等の詳細につきましては、大学入試センターに直接お問い合わせ下さる様お願い致します。また、同センターのサイトも併せてご参照下さい。
【E-mail登録のお願い】
インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録下さい。 E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取りになれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。
【在留届に関するお願い】
近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。 当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。 このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。 また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。
(4)その他
【当館領事業務へのご意見募集】
当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に下記領事班あてにE-mailにてご連絡下さい。
在ポルトガル日本国大使館(領事班) (EMBAIXADA DO JAPÃO)
住 所:Avenida da Liberdade、245-6 1269-033 Lisboa T E L:21-311-0560 F A X:21-354-3975 E−mail:consular@lb.mofa.go.jp
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