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平成25年 1月 4日
1.四宮大使からのメッセージ
2013年、新しい年を迎えるにあたり、皆様には謹んでご挨拶を申し上げます。 リスボンでは、年末年始も晴天が続き、気温も昼間は15度前後と爽やかな気候が続いています。日本の冬の寒さに比べ、この地の温暖な気候はありがたく思います。
当国では、コエーリョ首相の連立政権が発足して1年半が経ちました。EU、欧州中銀、IMFの「トロイカ」から3年間で780億ユーロの融資を受け、財政再建と経済成長の支援プログラムを実施する「トロイカ合意」も、計画の中間点を迎えんとしています。経済危機の深刻さから、厳しい負担を伴う緊縮策や弱者保護を弱めても経済効率を高めんとする構造改革に、国民は暗黙の支持を与えて来たように見えます。しかし、昨年秋に全国で大規模な抗議行動が発生して以来、緊縮策への反対の声が大きくなり、潮目が変わったようにも見られます。 本年は、前例のない大幅な増税策を柱とした緊縮予算が実施されることになりました。この予算には税負担に不平等があるとの疑義が出されており、野党議員は憲法裁判所に違憲訴訟を行う構えです。昨年の例に照らせば、違憲判決が出る可能性もあると言われています。また、今月の給与が支給された時点で、給与所得者は新たな増税の重さを実感し、あらためて緊縮策への不満が高まるとの予想も見られます。 マクロ経済でも、政府の緊縮財政にもかかわらず税収効果も出ない中、昨年の財政赤字目標5%の達成さえ危うい状況です。また国民は、増税や給与削減で可処分所得がさらに減少し、失業率の増加も深刻です。企業活動も、輸出や観光業の健闘はあるものの、国内消費や設備投資の低迷で、景気後退は深刻です。他方、GDPデフレーターが昨年第2四半期からマイナスに転じてきたことも懸念されます。 明年後半にはGDPの下落が底を打つとの政府の見通しも、なかなか楽観できません。欧州のユーロ危機は、制度的手当が徐々に進んで、当面の危機は避けられたようにも見えますが、経済の再生には至っていません。欧州の経済状況が直に影響するポルトガル経済としては、この点も重要な問題です。
経済の厳しさが増す中、政治面でも野党の社会党の支持率が与党を上回ってきています。議会で過半数を占めるとはいえ、国民の不満が高まれば政府の緊縮策にも影響が出るでしょう。10月の統一地方選挙はまだ先ですが、各党はこの選挙を政治の流れを代える節目と見て動いていくようです。西欧では、中央政党の指導者が大都市の首長を経験して中央に戻る例は少なくありません。 政府は、引き続き「トロイカ合意」の実施を最優先に進めて行くでしょう。しかし、国民や野党の厳しい批判を受け、緊縮策と国民負担のバランスをどのように取っていくのか、これからも目が離せない状況です。
昨年のポルトガル外交についても言及しておきたいと思います。 当国は2年にわたる国連安全保障理事会の非常任理事国の任期を、昨年末に終えました。当国は安保理の理事国として、例えば中東での「アラブの春」に係わる問題などで、大きな役目を果たしました。また、厳しい経済事情にもかかわらず、アフリカなどのポルトガル語圏への経済協力にも努力を続けました。NATOの一員として、アフガン、コソボへ、またEUの一員としてソマリアやインド洋へ、さらに国連の活動としてレバノンや東チモールへ軍事要員の派遣や経済面での貢献を引き続き行ったことは、国際社会の一員としての責任感の表れと評価できるでしょう。 経済面でも積極的な外交を見せました。大統領、首相、外務大臣その他政府の高官が手分けして頻繁に外遊を行い、特に経済面での苦境を克服するため、投資の誘致や貿易の促進に努めたことは、特筆すべき動きだったと思います。外務大臣の外遊は、この1年半で30回にも上りました。 日本との関係でも、先月の経済雇用省の副大臣2名の訪日やそれに先立つリスボン市長の訪日は、リスボン市でのスマート・シティー計画や再生可能エネルギー分野での新たな協力を進めるものでした。本年は、これらを発展させるとともに、さらに外交や経済の面で、これまでにない協力関係が実現するよう、大使館でも努力を重ねたいと考えています。
本年はポルトガル人が1543年に種子島に漂着してから、470周年に当たります。西欧人が初めて我が国に渡来した歴史的なこの事件は、日本人なら小学校以来、日本史の授業で何度も習う話です。この記念すべき年に、新たな日ポ関係の発展を期すべく、大使館でも関係者の方々と協力して、年間を通じた各種の記念行事を行いたいと考えています。 大使館としては、文化交流はもとより、経済面での交流の促進や政治・外交面での協力、ハイレベルの人の交流、地方同士の交流など、特に大使館でなければ実現できない企画に対し、限られた資源を集中したいと考えています。日本でも在京大使館や、日本ポルトガル友好協会などが、同趣旨の事業を企画しているとお聞きしています。当地でも、先月の天皇誕生日の祝賀会で、470周年記念行事のロゴを発表いたしました。いずこも厳しい財政事情にありますが、創意工夫と努力次第で、大きな可能性を実現することができるでしょう。今年も皆様のご協力とご支援を心よりお願い申し上げます。
時節柄、ご自愛の程をお祈り申し上げます。
2.大使館からのお知らせ
(1)政治・経済関係
【オリヴェイラ、トリンダーデ両経済雇用省副大臣の訪日】
12月4〜8日、ポルトガル経済雇用省のオリヴェイラ副大臣(イノベーション担当)及びトリンダーデ副大臣(エネルギー担当)が訪日しました。両副大臣は外務省の浜田大臣政務官(当時)、経済産業省の佐々木経済産業審議官と面談を行ったほか、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を訪問、羽藤副理事長と面談しました。NEDOでは、スマートコミュニティ分野におけるポ日間協力に関するセミナーが開催され、両副大臣及び同行訪日した関連ポルトガル企業が参加しました。NEDOでは2013年初めにもポルトガルにおける当該分野の実証可能性に関する基礎調査(※リンク参照)を実施する予定であり、同調査事業を担う日本企業コンソーシアムと両副大臣をはじめとするポルトガル側関係者とのキックオフ・ミーティングも行われる等、今後の両国経済関係のさらなる発展につながる実りある訪日となりました。
(※平成24年12月3日「ポルトガルにおけるスマート都市構想実現化に向けた基礎調査」に係る実施体制の決定について)
【2012年第3四半期のGDP成長率及び一人当たりのGDP】
12月7日、国立統計院(INE)は、第3四半期のGDP成長率(改定値)を発表し、前期比▲0.9%(速報値▲0.8%)、前年同期比▲3.5%(同▲3.4%)と共に下方修正しました。また、13日には、2011年における一人当たりのGDPを発表し、前年比2.9ポイント減となる1万6046.59ユーロで、EU27カ国平均の77.4%でした。
【国連安保理におけるポルタス外相の演説】
12月12日、ポルタス外相はニューヨークの国連安保理で演説を行い、2011年からポルトガルが非常任理事国として国連安保理に参加できたことは「光栄であった」と述べました(注:ポルトガルは、2012年12月31日をもって、国連安保理の非常任理事国として2年間の任期を満了した)。また、国連における平和維持活動について、イエメンの他、ポルトガルが制裁パネルを務めたリビアの民主化移行に関する決定等、「極めて密度の濃い2年間であった」と振り返り、「さほど遠くない将来、再びこの場に戻って来るであろう」と言及しました。さらに、潘基文(バン・ギムン)国連事務総長との会談では、中東情勢、ギニアビサウと東ティモール等のポルトガル語圏諸国の情勢について話し合いました。
【ポルトガル航空(TAP)売却先の決定延期】
12月20日、政府は閣議後に、トロイカ合意で民営化の対象となっているポルトガル航空(TAP)売却先の決定を延期する旨発表しました。アルブケルケ財務副大臣(国庫担当)によると、唯一の応札企業(コロンビア系アビアンカ航空を傘下に置くシナジー・グループ)の提案は前向きな内容であったものの、必要条件を完全に満たすものではなかったということです。なお、同副大臣は、トロイカ合意履行を踏まえ、TAP売却に係る戦略を改めて検討する意向であると明らかにしました。
【首相討論におけるコエーリョ首相演説及びクリスマス・メッセージ】
12月21日、コエーリョ首相は、各党首・代表らと行う首相討論において、10年物長期国債の利回りが2011年2月以来初めて7%を下回ったことに言及し、これは極めて重要なシグナルであり、経常収支赤字の解消も予定より早く進んでいる旨述べました。また、2012年は,1974年以降で最も厳しい時期となると同時に、再び危機に陥ることを回避するための将来に向けた出発点であったとして、各種改革の進捗状況を強調しました。
25日夜、同首相は国営TV局(RTP1)にて国民向けのクリスマス・メッセージを発出し、深刻な危機を乗り越えたとは未だ言えないが、財政支援プログラムの大半は既に実行され、国際機関との信頼を構築した点に触れ、明るい未来の基礎を築き始めたと述べました。さらに、海外のポルトガル人コミュニティや世界各地で作戦行動に取り組む軍人らへ思いを馳せる重要性に言及し、共に困難を克服するために彼らの存在を忘れてはならないと呼びかけました。
【2013年度予算の公布】
12月28日、カヴァコ・シルヴァ大統領は2013年度予算を公布し、同31日に官報に掲載されました。これによって、2013年1月1日より同予算は執行されることになります。
(2)広報・文化関係
【日本大使公邸における天皇誕生日祝賀レセプション開催(報告)】
12月13日(木)、日本大使公邸において、天皇誕生日祝賀レセプションが開催されました。レセプションには、ヌーノ・クラート教育科学大臣、ジョルジ・バレット・シャヴィエル文化担当副大臣、エドゥアルド・フェッロ・ロドリゲス共和国議会副議長、ミゲル・フラスキーリョ・ポルトガル日本友好議員連盟会長を初めとするポルトガル政官界関係者、日本・ポルトガル両国企業関係者、日本文化関連団体、当地在留邦人の方々、外交団等、およそ400名の皆様に御参加頂きました。
四宮信隆大使より、御挨拶において、2013年は日本・ポルトガル交流470周年にあたり、一年を通じ両国で様々な交流行事が予定されており、これを機に二国間関係が一層強化されることを祈念する旨述べた上、交流470周年の開始が宣言されました。また、ポルトガルにおける記念行事で使用されるロゴマークも披露されました。
日本国大使館と致しまして、日本と欧州との間で最も旧い歴史のある二国間関係がさらに発展する年となるよう、引き続き全力を挙げて取り組んで参ります。
【2013年−日本・ポルトガル交流470周年の開始】
2013年、日本とポルトガルは、1543年の種子島における鉄砲伝来以来、交流 470周年を迎えます。ご承知の通り、ポルトガルは日本と最も長い交流の歴史を有するヨーロッパの国であり、この470年にわたる両国の友好の絆を未来へ向けて一層強化し発展させるべく、この一年間、日ポ両国において様々な記念事業等が予定されています。
当館では、交流470周年に向けて、「イベントカレンダー」、「イベントのご登録」をはじめとする470周年関連情報用サイトを下記の通り新たに開設しました。随時更新して参りますので、ぜひご参照の上、皆様の幅広いご参加・ご登録、並びにご支援を賜れれば幸いです。また、日本・ポルトガル交流470周年ロゴマークを作成しましたので、併せご紹介致します。ロゴマークの使用規定につきましても下記470周年関連情報用サイトを御覧下さい。
【折り紙ワークショップ】
日本大使館の主催により、下記の日程で「折り紙ワークショップ」が開催されます(参加無料。要事前申込)。参加申し込み・その他詳細については、下記までお問い合わせ下さい。
日時:1月30日(水) 15:00〜17:00 1月31日(木) 10:00〜12:00 2月 1日(金) 10:00〜12:00、15:00〜17:00 の計4セッション 会場:日本大使館多目的ホール 住所:Av. da Liberdade 245-6°, 1269-033 Lisboa お問い合わせ:213 110 560 / cultural@embjapao.pt(大使館広報文化班) 参加申込: 1月7日(月)より受け付けを開始します。 また、定員は各セッションにつき22名となっています。
【風呂敷ワークショップ】
日本大使館の主催により、下記の日程で「風呂敷ワークショップ」が開催されます(参加無料。要事前申込)。参加申し込み・その他詳細については、下記までお問い合わせ下さい。
日時:1月30日(水) 10:30〜12:30 1月31日(木) 15:00〜17:00 会場:日本大使館多目的ホール 住所:Av. da Liberdade 245-6°, 1269-033 Lisboa お問い合わせ:213 110 560 / cultural@embjapao.pt(大使館広報文化班) 参加申込:1月7日(月)より受け付けを開始します。 また、定員は各セッションにつき20名となっています。
【“Winter Garden” -現代日本アート展-】
国際交流基金・日本大使館・シントラ市の共催により、標記展覧会が以下の通り開催されます。詳細については、下記問い合わせ先までご連絡下さい。
日時:2月末〜3月にかけて(現在調整中) 会場:シントラ市現代美術館(Sintra Museu de Arte Moderna) 住所:Av. Heliodoro Salgado, 2710-575 Sintra お問い合わせ:213 110 560 / cultural@embjapao.pt(大使館広報文化班)
(実施報告)
【「リスボン」をテーマとした俳句朗読会の開催】
リスボン市主催・日本大使館の協力により、「リスボン」をテーマとして募集した俳句の作品朗読発表会が、12月1日(土)、リスボン市トゥリン劇場において開催されました。朗読会では、ポルトガル語による俳句集の著書もあるレオニルダ・アルファロビーニャ(Leonilda Alfarrobinha)氏による俳句についての簡単な紹介、リスボン市文化部のパウロ・ブラガ(Paulo Braga)氏及び日本大使館の近藤健書記官から参加者への賞辞が述べられ、応募者が自らの作品を朗読・披露、応募全43作品を収めた句集が贈呈されました。
(3)領事関係
【「平成25年(2013年)の日本国大使館休館日」について】
平成25年(2013年)の日本国大使館休館日は以下のとおりです。
在外公館の休館日の設定に関しては、「行政機関の休日に関する法律」(昭和63年12月13日、法律第91号)において、(1)日曜日及び土曜日、(2)「国民の祝日に関する法律」、(3)12月29日から翌年の1月3日までの日を行政機関の休日と規定しています。平成25年における我が国行政機関の休日は、(1)を除くと17日間になります。
なお、当館の休館日の設定に際しては、ポルトガルの祝休日を優先的に休館日とし、残りの日数については、我が国行政機関の祝休日を充てています。
【E-mail登録のお願い】
インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録下さい。 E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取りになれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。
【在留届に関するお願い】
近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。 当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。
このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。
また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。
(4)その他
【さくら会からのお知らせ】
当地在住の邦人女性または日本人配偶者を持つ女性で形成されるさくら会では随時会員を募集しております。右要件を満たす方であればどなたでも入会できます。お問い合わせはお気軽に下記連絡先まで。
【当館領事業務へのご意見募集】
当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。 |