東博史 駐ポルトガル大使着任の御挨拶(2013年8月~2017年10月)

平成25年11月11日
 この度、ポルトガル共和国に日本国特命全権大使として赴任して参りました東 博史(あずま ひろし)です。

 西欧文明を初めて我が国に伝え、西欧諸国の中で最も長い友好の歴史を持つポルトガルに着任し、両国関係の更なる発展のため微力を尽くしたいと存じますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 本年は種子島にポルトガル人が来訪してから「470周年」に当たり、これを記念して両国で多彩な交流事業が行われています。年間を通じ多くの交流行事を企画、実施してこられた皆様、行事にご参加くださった多くの方々に、深甚なる敬意と感謝を表したいと思います。また、この記念行事によつて日・葡双方の国民が長い交流の歴史を思い起こし、今後の両国関係に思いを巡らせる機会になっていることを嬉しく思います。
 私自身、ポルトガル赴任直前の10月初旬に、ポルトガルと関係の深い「長崎市」(ポルト市の姉妹都市)と「徳島市」(レイリア市の姉妹都市)を訪問し、日本とポルトガルの5世紀に亘る長い歴史的交流を再認識致しました。特に、長崎市の都市形成にあたってポルトガル人が与えた影響をはじめとして、両国が相互に文化的な影響を及ぼし合っているとの事実や徳島にて生涯を終えたポルトガル人文筆家の「モラエス」が今なお徳島の人達に慕われ、ポルトガルを愛してやまない多くの方々のよりどころとなっているとの事実等、日・葡両国間の歴史には日本人の一般知識をはるかに超えた興味深い史実が多く存在していることを改めて認識しています。今後、これらの史実を両国民に更に知ってもらい、相互理解の深化を図るとともに、両国間の一層の関係強化のために、現在8組ある「姉妹都市交流」の促進に注力するとともに、 引き続き「文化、学術、観光」などの交流を促進し、また我が国の広報にも意を用いていきたいと考えております。

 また、現在ポルトガルは、経済・財政危機克服のため「緊縮政策」等に真剣に取り組んでいます。ポルトガルの内政、外交は、この課題克服を軸に動いていると言っても過言ではないと思われます。
 他方、我が国では、安倍政権の誕生以来、「デフレから脱却し、経済再生を実現」するため、いわゆる「アベノミクス」の「3本の矢」である「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を一体的に推進中で、一定の成果も見え始めています。
 これまで、両国の厳しい経済状況の中で、経済交流の面では日・葡双方の潜在的な力が十分発揮されて来なかった面もあったように思われます。
 幸い、種子島にポルトガル人が来訪してから「470周年」の記念すべき本年3月には「ポルタス外相(現副首相)の訪日」、7月には「経団連のポルトガル訪問」が実現したと伺っております。また、本年、日・葡間の「二重課税防止条約」が発効した他、「NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のスマートコミュニティ分野での協力」に進展が見られました。更に「丸紅」の葡の電力分野への参入、「カゴメ社」の研究センターの設置等「日本企業」の新規投資等の動きも見られ両国間の経済関係進展にとり「心強い」ものとなりました。
 経済分野においても、日・葡双方が「ウィン・ウィン」の関係を築き、共に両国の「課題」を克服できるよう関係者ともよく話し合い、具体的な方策を考え、実現していくよう努めたく存じます。その際、特に「日本企業支援」、当国における「邦人保護」にも全力を尽くして参ります。

 このように、政治、経済、文化など幅広い分野で 日・葡関係が一層発展するよう尽力する所存ですので、皆様の御理解と御支援・御協力を賜りますようお願い申し上げ、私の着任の挨拶とさせていただきます。