大使館便り第101号(平成23年8月)
平成23年 8月 1日
在ポルトガル日本国大使館
1.四宮大使からのメッセージ
8月、本格的な夏を迎えたリスボンでも、学期の終了や休暇を取る人が増えてきて、市内の交通量が減少し、代わりに観光客がさらに増えてきました。南欧らしい日差しの強さも、湿度が少ないため日陰に入れば快適なのは、高温多湿の日本の夏と大分違います。
コエーリョ政権は7月はじめ議会で「政策プログラム」が承認され、本格的に動き出しました。真夏の市内の雰囲気とは裏腹に、政権発足早々から財政危機への対応に多忙な様相を見せています。6月は総選挙や新内閣発足で「政治の季節」でしたが、7月からは「経済の季節」が始まったようです。
新政権にとっても、EU等との政策合意の履行が最優先課題に変わりありません。合意の前倒し実施や追加策としての所得税の増税(本年に限り、3.5%増ないしクリスマス手当の半額相当分。)まで検討するとのことです。厳しい増税や歳費の削減等により、政府の発表によれば、本年と明年のGDPはそれぞれ▲2.3%、▲1.7%のマイナス成長で、失業率も本年の約11%から明年は13.2%に達するとの予測です。貧困層を抱える当国社会には厳しい状況が続くことになります。さらに財政危機を乗り越えても、経済成長を見るには、外資の導入、技術開発、国民の意識改革、社会制度の改革等、競争力強化への長い道のりが待っています。ギリシャのような激しい反対運動はこの国民性から考えにくいとはいえ、どこまで社会的、政治的に耐えられるかという問題は残ります。
この国の財政危機は、国債価格の下落の形で現れました。これは、国内経済の弱さという内的要因だけでなく、外的要因もある根深い問題だと思います。この危機は、単一通貨ユーロ体制に内在する問題が表面化したものと見ることもできるでしょう。ユーロ体制が欧州共同市場の拡大強化に貢献したのは確かですが、同時に各国の経済力の格差から来る交易条件の違いを通貨間の為替レートで調整する従来の機能が失われました。しかし、現実にユーロ各国の経済格差は存在し、それを是正する制度が不十分なことで、各国政府の国債価格の変動にその調整機能が求められたのではないでしょうか。国債に本来その役割はありませんでしたが、国際取引される比率が高まり、そのような形でしわ寄せが来たのではないかと思われます。
現在のEU、IMF、欧州中銀(ECB)によるポルトガル等への財政支援と平行して、ユーロ体制の持つこのような問題の改革、救済措置も議論され実施されつつあります。先月のユーロ圏首脳会議では、ギリシャへの追加支援とあわせ、ポルトガルやアイルランドにも融資の償還期限と金利水準について条件緩和が合意されました。関係国間の利害調整という難しい問題もありますが、ユーロ体制の安定の重要性を考えると、引き続き関係国の努力を期待したいと思います。同時に、国債の価格変動が過度に市場原理に任されることがないよう国際社会の協力も必要で、日本の役割もあると思われます。
翻って我が国の状況も、報道では震災の復興や原発事故対応では難問が多いようで、心が痛みます。米国政府の財政債務の限度額の引き上げ問題は、ぎりぎりのタイミングで債務不履行の危機を回避できるようですが、これも深刻な問題でした。
世界各地で多事多難が続きます。
皆様には、時節柄ご自愛のほどをお祈り申し上げます。
2.大使館からのお知らせ
(1)総政務・経済班からのお知らせ
【クリスマス手当に関する半額相当の特別税発表】
EU・IMFとの支援合意案(MoU)よりさらに踏み込んだ施策として、1日、コエーリョ首相は財政赤字削減の追加策としてクリスマス手当の半額相当に及ぶ特別税の導入を発表しました。14日には、ガスパール財務相が同特別税の詳細(2011年の所得のみに対する限定課税、全ての個人所得に課税、低所得者層は非課税、税率は3.5%(給与取得者についてはクリスマス手当の半額相当)、本税による税収見込みは10億2500万ユーロ等)を明らかにし、本2011年の財政赤字(対GDP比)を5.9%へ引き下げる目標の達成に強い決意を示しました。
【ポルトガル国債の格下げ】
格付け会社ムーディーズは、ポルトガル国債の格付けを4段階引き下げ(「Baa1」→「Ba2」)、投機的水準(見通しは「ネガティブ」)としました。債務再編を含む追加支援要請に迫られるリスクが高いことや、政府がEU・IMFと合意した財政赤字削減目標を達成できないとの疑念が広まったことが理由として挙げられています。しかし、ポルトガルは財政再建に向けた取り組みを始めたばかりの時期だけに、ムーディーズによる格下げは国内外から批判の声が上がりました。
【社会党(PS)書記長選】
22日から2日間,最大野党社会党(PS)の書記長選が実施され,事前の予想通り,アントニオ・ジョゼ・セグーロが投票総数の7割弱を獲得し,フランシスコ・アシスを抑え当選しました。セグーロ新書記長は勝利演説で,EU・IMFとの支援合意案(MoU)履行を大前提としながらも,党の方針に則った代案提出の可能性を示唆し,政府に対して,責任感のある建設的野党となることを宣言しました。
(開票結果)
得票率 | ||
アントニオ・ジョゼ・セグーロ | 2万3903票 | (67.98%) |
フランシスコ・アシス | 1万1257票 | (32.02%) |
白票 | 216票 | ( 0.61%) |
無効票 | 151票 | ( 0.43%) |
(2)広報・文化班からのお知らせ
【キャラクター大国、ニッポン展】
キティーちゃんやポケモンなど日本で人気のマスコットキャラクターをパネルや映像、ミニチュア等で紹介する標記イベントが、国際交流基金事業として以下の日程で開催されます。
日時:8月19日(金)~9月18日(日)
10:00~18:00(火~日曜(金曜除く))
10:00~22:00(金曜18:00~22:00は入場無料)(月曜休館)
会場:オリエント博物館、Galeria Sul
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:0~5:無料、6~12及び学生:2ユーロ、大人:5ユーロ、65歳以上:3ユーロ
問い合わせ先:21-311-0560 / cultural@embjapao.pt
URL: http://www.museudooriente.pt/
※19日のオープニングには、陶山恵准教授によるアニメ講演会が開催されます。(下記参照)
【陶山恵・東京工芸大学准教授による講演会】
これまでもポルトガルでマンガ・アニメ関連の講演を行なってきた陶山恵・東京工芸大学准教授によるアニメ講演会が、上記「キャラクター大国、ニッポン展」のオープニング式典の一環として以下のとおり開催されます。
講演タイトル:「ポケモンから考える日本アニメ文化」(ポルトガル語通訳付き)
日時:8月19日(金) 19:30~
会場:オリエント博物館
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
【菊池直子氏による琴コンサート】
ドイツ在住の音楽家菊池直子氏による琴の演奏コンサートが下記の日程で開かれます。
日時:8月20日(土) 21:30~
会場:オリエント博物館、Galeria Sul
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:12ユーロ
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
【舞踊団「マドモアゼル・シネマ」によるコンテポラリーダンス公演】
文化庁助成事業として、舞踊団「マドモアゼル・シネマ」によるダンス公演が下記の日程で開催されます。
9月8日(木)
時間:21:30~
会場:オリエント博物館、Auditório
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:15ユーロ(ディナー付き:27ユーロ)
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
URL:http://www.museudooriente.pt/
9月10日(土)
会場:Centro Cultural Malaposta
住所:Rua Angola 2620-492 Olival Basto
入場料:12.5ユーロ
問い合わせ先:219 383 100 / info@malaposta.pt
【在ポルトガル日本大使館の新井公使による講演(カナヴァロ財団日本関連イベント】
カナヴァロ財団主催で、サンタンレン市の「Casa-Museu Passos Canavarro」において、新井公使による講演が2部に分けて下記の通り開催されます。本講演は、5月14日にオープンした同博物館が9月に開催する日本関連イベントの一環として行なわれます。同イベント詳細については、追ってお知らせします。
講演タイトル:(1)「日本食と日本における食習慣」及び
(2)「日本のポップカルチャー」
日時:9月17日(土) (1) 12:00~ / (2) 15:00~
会場:Casa-Museu Passos Canavarro
住所:Largo da Alcáçova 1, 2000-110 Santarém
問い合わせ先:213 110 560 / cultural@embjapao.pt (大使館広報文化班)
【JAPAN FESTA】
10月1日(土)、ベレン地区の日本庭園(Museu de Arte Popular 隣)において、日本文化紹介イベント「JAPAN FESTA」が開催されます。生け花、折り紙、舞踏、コスプレ、日本食販売その他の催しが予定されています。詳細につきましては、決まり次第改めてご連絡します。
【「日本語能力試験」の開催】
国際交流基金と日本国際教育支援協会の主催による「日本語能力検定」(JLPT)が下記の要領で実施されます。詳細については下記のサイトをご参照いただくか、又は下記にお問い合わせ下さい。
実施日時:12月4日(日)
実施会場:Faculdade de Letras da Universidade do Porto (ポルト大学文学部)
⇒住所:Via Panorâmica, g/n, 4150-564 Porto
願書入手方法:日本語能力試験実施委員会サイトよりダウンロード
在ポルトガル日本大使館(広報文化班)にて紙媒体の願書を入手
※志願者に対する願書の郵送は行ないません。
願書提出先:在ポルトガル日本大使館(広報文化班)
⇒住所:Av. de Liberdade, N°245-6°, 1269-033 Lisboa
⇒連絡先:cultural@embjapao.pt / 213 110 560
願書提出方法:持参もしくは郵送
願書提出期間:8月20日(土)~9月9日(金)
※郵送の場合、9月9日(金)到着分まで有効
本試験関連問い合わせ先:jlptportugal@gmail.com (日本語能力試験実施委員会)
本試験関連サイト:日本語能力試験実施委員会
(実施報告)
【JapanNET】
6月29日(水)、四宮大使公邸で、第8回Japan NET会合が開催されました(※JapanNET会合とは、ポルトガルにある日本関連団体間の協力関係をより発展させていくことを目的として設立されたネットワーキングです)。会合へはポルトガルの日本文化関連団体、日本と姉妹都市提携を結ぶ自治体、日本関連の講座を有する大学等から39名の代表者が集い、今後の日本関連イベント、姉妹都市交流の推進、日本研究の活性化などをテーマに活発な意見交換が行なわれました。
JapanNET会合で挨拶する四宮大使
(3)領事班からのお知らせ
【夏休みに海外に渡航する皆様へ(海外で注意すべき感染症について)】
夏休み期間に入り、海外へ渡航される機会が増える時期ですが、海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適な旅行となるよう、海外で注意すべき感染症及びその予防対策について、外務省海外安全ホームページの渡航情報を参考に、感染症に十分にご注意ください。
【E-mail登録のお願い】
インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスご登録ください。
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【在留届に関するお願い】
近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を元に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。
当館でも、皆様にご提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。
このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国に転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。
また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。
(4)その他
【Festa do Povo de Campo Maior の開催】
ポルタレーグレ県カンポ・マイオール市では、8月27日(土)から9月4日(日)までの予定で、7年ぶりに「Festa do Povo de Campo Maior」が開催されます。これは、市内の歴史地区を中心に、町の通りに住民が作成した色鮮やかな紙の花飾りなどで彩られる伝統の祭典です。当祭典には、隣国スペインを含めて、約100万人の観光客が訪れると予想されています。
【当館領事業務へのご意見募集】
当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですのでご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。