大使館便り第103号(平成23年10月)
平成23年10月 3日
在ポルトガル日本国大使館
1.四宮大使からのメッセージ
10月、このところリスボンでは爽やかな晴天の日々の合間に、まだ残暑の厳しい日も見られます。観光客も一時に比べ随分少なくなりました。
本日(1日)、リスボン市内のベレン地区にある「日本公園」で「ジャパン・フェスタ」を開催しました。幸い好天に恵まれ、昼の開会式から夜まで続いた日本関連の行事はとても盛況でした。詳細は大使館のHPなどで報告しますが、地元の方々だけでなく観光客も含め予想以上に多くの皆様に日本文化を楽しんでいただけたかと存じます。共催の「リスボン市」及び「ポ・日友好協会」と共に、行事の実現に尽力下さった方々に対し、心から御礼申し上げます。
この「日本公園」は、種子島にポルトガル人が訪れてから460周年を記念して2004年に作られました。相当数の桜の苗木も植えられましたが、その後、残念なことに木は枯れてしまい、2008年に改めて150本以上の植樹が行われました。翌年から少しずつ花がつき、今年の春に改めてこの「日本公園」の開会式を「ジャパン・フェスタ」として行う予定でした。しかし、東日本大震災が起こったため延期となり、本日の開催になったものです。
このベレン地区は、かつてポルトガルの大航海時代、新天地への船出の港でした。ここから出航した船乗り達によって我が国と西洋世界との交流が始まった、日本にとっても歴史的意味の大きい場所です。将来は毎年春に、この地を日本の桜で飾り、リスボンの新名所にしようと、これまで日・ポ双方から多くの方々が尽力されてきました。桜の開花も来年はさらに増えるでしょう。今回の参加者からは、来年は桜の花の下で、日本の祭りを行いたいとの声も多く聞かれました。夢の実現に、大使館も皆様と共に取り組んでいきたいと思います。
先月の文化事業として、東京のモダン・バレー団「マドモアゼル・シネマ」が当地で公演を行いました。若い女性のバレー団ですが、普段は昼間の仕事のあと都内の練習場で鍛練を積み、今回は文化庁の支援を受けてポルトガルに来られました。公演の前日に皆さんとお会いした時は普通のお嬢さんたちのように見えた方々が、舞台では全身で表現するこの芸術の躍動感に圧倒され、息を呑むような感動を覚えました。先般の「なでしこジャパン」の快挙も思い起こされ、日本の若い女性の活躍をとても嬉しく感じました。
また先月は、地方を訪れる機会がいくつかありました。
EUでは、毎年加盟国のいずれかの都市を「欧州文化首都」に指名し、一年間にわたり様々な芸術文化の行事を行っています。日本からも「EU・ジャパンフェスト日本委員会」などが1993年以来、日本の企業などの協力を得て多くの文化使節を派遣しています。来年は、当国の北西部にあるギマランイス市がこれに指名されました。今回は同「委員会」の方とともに、来年の派遣の打ち合わせをしてきました。
ここは人口約16万の小都市ですが、ポルトガル王国の初代国王生誕(12世紀初め)の地で、中世の歴史的建造物も多く、世界遺産(文化)に登録された美しい街です。また、ポルトガルの地方都市の中でも工業が発達した都市の一つです。この機会に、市長の計らいで主要産業の織物(LAMEIRINHO社)、靴(KYAIA社)、金属食器(HERDMAR社)を視察してきました。工場では、製品向上への各社の努力がそれぞれ印象的でした。また、製造機械がほとんどドイツ製か日本製であったのも忘れられません。消費財だけでなく、生産財(製造機械)に優位性を持つことは国民経済の底力を示すもので、競争力強化を目指すこの国の経済を考える上でも大事な問題のように思われました。
また、徳島市の経済同友会の視察団の方々と、同市の姉妹都市であるレイリア市を訪問しました。以前から日本の経済関係者の来訪を希望していたレイリア市長の意向もふまえ、視察団の方にお願いして同市訪問を日程に入れていただき、徳島市の原市長の親書もご持参下さいました。限られた時間でしたが、市長自らの案内で市内とワイン工場も視察しました。姉妹都市の間の経済交流の面で、今後何らか効果が生まれるきっかけになればと願う次第です。
さらに、リスボン近郊のヴィラ・ノヴァ・デ・シラ市長を訪問しました。これは、日本のカゴメ(株)が筆頭株主となっている同市のトマト・ペースト製造企業(HIT社)の工場を視察した際、そこの市長も訪問したものです。工場では、トマトが成熟する夏の期間に大量の加工を一気に行う作業を大変興味深く見させていただきました。ちなみに同社はポルトガルのトマト加工の約3割を担っており、業界第2位の位置を占めています。市長とは、日本企業が地元にある縁を生かして、まずは日本の文化紹介事業などを検討してみようとの話をしました。大使館では、この様な形も含め、日本企業が地元との関係を深める上でもお役に立てれば幸いと考えています。
また、当国北部のポルト市からドウロ川を西に遡りピニャオンという小さな港町まで、100キロ以上を船でほぼ一日かけて行く機会がありました。途中、この川の水面の高低差を乗り切るための閘門(こうもん)式ダムを3回通ります。このドウロ川の上流地域は、当国の主要輸出品であったポルト・ワインの原料ブドウを産する地区で、かつてはこの国の経済を支えてきたところです。ブドウ畑は、両岸にそそり立つ斜面に長い年月をかけ整備されています。世界遺産(文化)にも登録されたこの地区の景観は一見に値すると、当地着任以来多くの方から勧められていました。実際、船の甲板から天空に達するような段々畑を見上げると、乾燥した空気の中に、ブドウ畑の緑と深い青空とのコントラストが美しく、絵画の世界にいる錯覚を覚えました。9月はブドウの収穫時期で、普段は陸上で収穫作業やブドウ満載のトラックが行き交っているはずですが、週末のため人影も少なく、よけい不思議な光景に見えたのかもしれません。
今月30日には、当国でも夏時間が終了します。
時節柄、皆様にはご自愛のほどをお祈り申し上げます。
2.大使館からのお知らせ
(1)総政務・経済班からのお知らせ
【クリスマス手当に関する半額相当の特別税発表】
EU・IMFとの支援合意案(MoU)よりさらに踏み込んだ施策として、1日、コエーリョ首相は財政赤字削減の追加策としてクリスマス手当の半額相当に及ぶ特別税の導入を発表しました。14日には、ガスパール財務相が同特別税の詳細(2011年の所得のみに対する限定課税、全ての個人所得に課税、低所得者層は非課税、税率は3.5%(給与取得者についてはクリスマス手当の半額相当)、本税による税収見込みは10億2500万ユーロ等)を明らかにし、本2011年の財政赤字(対GDP比)を5.9%へ引き下げる目標の達成に強い決意を示しました。
【ポルトガル国債の格下げ】
格付け会社ムーディーズは、ポルトガル国債の格付けを4段階引き下げ(「Baa1」→「Ba2」)、投機的水準(見通しは「ネガティブ」)としました。債務再編を含む追加支援要請に迫られるリスクが高いことや、政府がEU・IMFと合意した財政赤字削減目標を達成できないとの疑念が広まったことが理由として挙げられています。しかし、ポルトガルは財政再建に向けた取り組みを始めたばかりの時期だけに、ムーディーズによる格下げは国内外から批判の声が上がりました。
【社会党(PS)書記長選】
22日から2日間,最大野党社会党(PS)の書記長選が実施され,事前の予想通り,アントニオ・ジョゼ・セグーロが投票総数の7割弱を獲得し,フランシスコ・アシスを抑え当選しました。セグーロ新書記長は勝利演説で,EU・IMFとの支援合意案(MoU)履行を大前提としながらも,党の方針に則った代案提出の可能性を示唆し,政府に対して,責任感のある建設的野党となることを宣言しました。
(開票結果)
得票率 | ||
アントニオ・ジョゼ・セグーロ | 2万3903票 | (67.98%) |
フランシスコ・アシス | 1万1257票 | (32.02%) |
白票 | 216票 | ( 0.61%) |
無効票 | 151票 | ( 0.43%) |
(2)広報・文化班からのお知らせ
【キャラクター大国、ニッポン展】
キティーちゃんやポケモンなど日本で人気のマスコットキャラクターをパネルや映像、ミニチュア等で紹介する標記イベントが、国際交流基金事業として以下の日程で開催されます。
日時:8月19日(金)~9月18日(日)
10:00~18:00(火~日曜(金曜除く))
10:00~22:00(金曜18:00~22:00は入場無料)(月曜休館)
会場:オリエント博物館、Galeria Sul
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:0~5:無料、6~12及び学生:2ユーロ、大人:5ユーロ、65歳以上:3ユーロ
問い合わせ先:21-311-0560 / cultural@embjapao.pt
URL: http://www.museudooriente.pt/
※19日のオープニングには、陶山恵准教授によるアニメ講演会が開催されます。(下記参照)
【陶山恵・東京工芸大学准教授による講演会】
これまでもポルトガルでマンガ・アニメ関連の講演を行なってきた陶山恵・東京工芸大学准教授によるアニメ講演会が、上記「キャラクター大国、ニッポン展」のオープニング式典の一環として以下のとおり開催されます。
講演タイトル:「ポケモンから考える日本アニメ文化」(ポルトガル語通訳付き)
日時:8月19日(金) 19:30~
会場:オリエント博物館
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
【菊池直子氏による琴コンサート】
ドイツ在住の音楽家菊池直子氏による琴の演奏コンサートが下記の日程で開かれます。
日時:8月20日(土) 21:30~
会場:オリエント博物館、Galeria Sul
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:12ユーロ
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
【舞踊団「マドモアゼル・シネマ」によるコンテポラリーダンス公演】
文化庁助成事業として、舞踊団「マドモアゼル・シネマ」によるダンス公演が下記の日程で開催されます。
9月8日(木)
時間:21:30~
会場:オリエント博物館、Auditório
住所:Avenida Brasília, Doca de Alcântara (Norte) 1350-352 Lisboa
入場料:15ユーロ(ディナー付き:27ユーロ)
問い合わせ先:213 585 200 / info@foriente.pt
URL:http://www.museudooriente.pt/
9月10日(土)
会場:Centro Cultural Malaposta
住所:Rua Angola 2620-492 Olival Basto
入場料:12.5ユーロ
問い合わせ先:219 383 100 / info@malaposta.pt
【在ポルトガル日本大使館の新井公使による講演(カナヴァロ財団日本関連イベント】
カナヴァロ財団主催で、サンタンレン市の「Casa-Museu Passos Canavarro」において、新井公使による講演が2部に分けて下記の通り開催されます。本講演は、5月14日にオープンした同博物館が9月に開催する日本関連イベントの一環として行なわれます。同イベント詳細については、追ってお知らせします。
講演タイトル:(1)「日本食と日本における食習慣」及び
(2)「日本のポップカルチャー」
日時:9月17日(土) (1) 12:00~ / (2) 15:00~
会場:Casa-Museu Passos Canavarro
住所:Largo da Alcáçova 1, 2000-110 Santarém
問い合わせ先:213 110 560 / cultural@embjapao.pt (大使館広報文化班)
【JAPAN FESTA】
10月1日(土)、ベレン地区の日本庭園(Museu de Arte Popular 隣)において、日本文化紹介イベント「JAPAN FESTA」が開催されます。生け花、折り紙、舞踏、コスプレ、日本食販売その他の催しが予定されています。詳細につきましては、決まり次第改めてご連絡します。
【「日本語能力試験」の開催】
国際交流基金と日本国際教育支援協会の主催による「日本語能力検定」(JLPT)が下記の要領で実施されます。詳細については下記のサイトをご参照いただくか、又は下記にお問い合わせ下さい。
実施日時:12月4日(日)
実施会場:Faculdade de Letras da Universidade do Porto (ポルト大学文学部)
⇒住所:Via Panorâmica, g/n, 4150-564 Porto
願書入手方法:日本語能力試験実施委員会サイトよりダウンロード
在ポルトガル日本大使館(広報文化班)にて紙媒体の願書を入手
※志願者に対する願書の郵送は行ないません。
願書提出先:在ポルトガル日本大使館(広報文化班)
⇒住所:Av. de Liberdade, N°245-6°, 1269-033 Lisboa
⇒連絡先:cultural@embjapao.pt / 213 110 560
願書提出方法:持参もしくは郵送
願書提出期間:8月20日(土)~9月9日(金)
※郵送の場合、9月9日(金)到着分まで有効
本試験関連問い合わせ先:jlptportugal@gmail.com (日本語能力試験実施委員会)
本試験関連サイト:日本語能力試験実施委員会
(実施報告)
【JapanNET】
6月29日(水)、四宮大使公邸で、第8回Japan NET会合が開催されました(※JapanNET会合とは、ポルトガルにある日本関連団体間の協力関係をより発展させていくことを目的として設立されたネットワーキングです)。会合へはポルトガルの日本文化関連団体、日本と姉妹都市提携を結ぶ自治体、日本関連の講座を有する大学等から39名の代表者が集い、今後の日本関連イベント、姉妹都市交流の推進、日本研究の活性化などをテーマに活発な意見交換が行なわれました。
JapanNET会合で挨拶する四宮大使
(3)領事班からのお知らせ
【夏休みに海外に渡航する皆様へ(海外で注意すべき感染症について)】
夏休み期間に入り、海外へ渡航される機会が増える時期ですが、海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適な旅行となるよう、海外で注意すべき感染症及びその予防対策について、外務省海外安全ホームページの渡航情報を参考に、感染症に十分にご注意ください。
【E-mail登録のお願い】
インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスご登録ください。
E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取になれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。
インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスご登録ください。
【在留届に関するお願い】
近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を元に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。
当館でも、皆様にご提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。
このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国に転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。
また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。
(4)その他
【Festa do Povo de Campo Maior の開催】
ポルタレーグレ県カンポ・マイオール市では、8月27日(土)から9月4日(日)までの予定で、7年ぶりに「Festa do Povo de Campo Maior」が開催されます。これは、市内の歴史地区を中心に、町の通りに住民が作成した色鮮やかな紙の花飾りなどで彩られる伝統の祭典です。当祭典には、隣国スペインを含めて、約100万人の観光客が訪れると予想されています。
【当館領事業務へのご意見募集】
当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですのでご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。