大使館便り第109号(平成24年4月)
平成24年 4月 2日
在ポルトガル日本国大使館
1.四宮大使からのメッセージ
4月、リスボンでは本格的な春の季節を迎えています。テージョ川に陽光の輝く日には、半袖姿の旅行者さえ見受けられます。雨が来て少々肌寒い日もありますが、水不足を心配していた市民には待望の雨でした。
先月は、東日本大震災の一周年に際し、世界各地の日本大使館や総領事館で、追悼と復興のための記念行事を開催しました。震災の犠牲者のご冥福を祈り、この一年間の日本の努力と現状を海外に広報し、また各国から受けた多くの支援に改めて感謝するためのものです。
当大使館でも、リスボン市の中心にあるフォス宮殿において、追悼の式典と震災の状況を伝える写真などの展示会を開きました。また、ポルトガル政府(防災庁)と共催で「地震・津波:日本とポルトガルの経験」をテーマに、日本の専門家も参加した防災セミナーをあわせ開催しました。多くの方々にご参加頂き、改めて御礼申し上げます。
1755年にはリスボンでも、当時欧州を震撼せしめた地震と津波の大災害が発生しており、震災問題には当国の人々も強い関心を寄せています。右セミナー以外にも、当国のマスコミや地方自治体などがこの機会に、東日本大震災に関連する特集記事やシンポジウムを多数行いました。大使館でも、記事の取材や討論会などにいろいろな形で協力したところです。さらに、当国の「葡日友好協会」も、改めて日本を支援する記念行事を震災一周年に合わせて、カスカイス市で開催してくださいました。
また、当地の在留邦人の方が、福島県の相馬市および南相馬市から被災者の中学生24名を3月末から約1週間、当地に招待するという行事も行われています。異国での体験が苦しい経験をした若い人々の励みになればと、多くの方々や企業などもこの企画に協力してくれたそうです。大使館でも、震災直後に日本を励ます絵を沢山届けてくれた当地の学校や、震災の時ちょうど日本を訪問中だった学校の生徒さん達との交流会を実施しました。カバコシルバ大統領やコスタ・リスボン市長への訪問などのお手伝いもさせて頂きました。大統領は会見の挨拶で、震災の時に見せた日本人の行動を賞賛し、力強い日本の再生を確信していると述べ、被災地からの来訪者を励ましてくれました。当国のマスコミも連日、彼らの来訪を大きく報道しています。
ポルトガルでの様々な経験は、必ず彼らの将来に役に立つことと信じます。
先月は、アソーレス諸島を訪問しました。リスボンから空路で西に2時間余、約1500キロの大西洋上にあるこの9個の群島は、人口約24万のポルトガルの自治州の一つです。
今回は州政府のあるサン・ミゲル島、州議会のあるファイアル島および大統領の名代がおり、また米空軍の基地があるテルセイラ島の3島を駆け足で訪問し、それぞれ代表の方々と会見して来ました。
大西洋のほぼ中央にあるため、かつては新大陸航路の中継基地や捕鯨、遠洋漁業の基地として栄えたところです。コロンブスも新大陸を発見した第一次航海の帰途、ここに立ち寄っています(サンタ・マリア島、1493年)。第二次大戦中、中立政策をとったポルトガルの一部でありながら、英国との友好関係や米国からの圧力で、対独潜水艦の作戦基地として使用された歴史もあります。現在も米空軍の長距離作戦の補給基地の役割を担っています。
主な産業は、農業(パイナップル等の果実、お茶)、牧畜(乳製品、牛肉)、漁業(マグロ)、観光等。一人あたり所得は首都リスボンの約三分の二です。脆弱な州経済は、世界経済の不況で観光をはじめ各分野に影響が出ているとの声が聞かれました。米空軍の基地縮小による収入減や、当国の財政危機による政府支援の減少も懸念されています。
他方、州知事によれば昨年も日本人は600人ほど訪れたとのことです。在留邦人も6名の方が、在留届を出しておられます。
島の様子は、降水量が多く緑豊かで、火山島のため至る処に噴火口の跡やカルデラ湖、温泉などがあり、独特の景観を見せています。ファイヤル島から眼前に眺めた隣の島のピコ山は、当国の最高峰2351Mの火山で、富士山をさらにそびえ立たせたような絶景でした。また、1957年に噴火したサン・ミゲル島のカペリーニョ火山は、世界の火山研究の面でも貴重な存在のようです。
テルセイラ島のアングラ・ド・エロイスム市の町並みやピコ島のブドウ畑は世界遺産に登録されています。今回訪れた3島だけでも島ごとに、例えば畑の作り方が違い、ポルトガル語の方言や住民の気質まで9島それぞれに異なるそうです。働き者として知られるサン・ミゲル島の住民は、アソ-レスでは「日本人」と呼ばれているそうです。かつて栄えた捕鯨の博物館や、生産量が減少しつつあるアソーレス独特のワインの資料館も興味深いものでした。
日本からは遠い所ですが、州知事や州議会議長が希望していたように、日本の観光客にもアソーレス諸島の魅力を知ってもらえればと思います。
今年もリスボンの観光フェアが、先月開催されました。今回は、日本の観光関係の企業に加えて、当国と姉妹都市関係にある日本の自治体のご協力も頂き、日本各地の魅力も紹介させて頂きました。大震災のあと、日本では観光業も大きな打撃を受けていることに鑑み、今年は食文化の面も含めて、さらに情報の提供に努めました。多くのポルトガルの方々が日本ブースにお見えになったのも、日本の多くの企業や自治体などのご協力のお陰と深く感謝しています。今後とも、関係者の方々と協力しつつ、当館として工夫に努めて行きたいと考えます。
季節の変わり目に当たり、皆様にはご自愛のほどをお祈り申し上げます。
2.大使館からのお知らせ
(1)総政務・経済班からのお知らせ
【東日本大震災追悼・復興行事の開催】
昨年、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした大地震、津波、そして原子力発電所の事故から、丸一年となる去る3月11日(日)、リスボン市のフォス宮において、追悼・復興行事を行いました。
第1部のレセプション、復興写真展には、ダーヴィラ内務副大臣はじめ政府及び議会関係者、外交団、在留邦人等、約200名の方々に出席頂きました。
冒頭、一分間の黙祷を行った後、会場を提供したフォス宮のコスタ館長の挨拶に続き、四宮大使より、これまでの日本国民・政府による復興の努力、復興状況を紹介しつつ、ポルトガル官民から得た支援に感謝の意を表しました。ダーヴィラ内務副大臣からは、改めて、日本国民、政府に対してお見舞いと弔意が表されると共に、冷静かつ忍耐強く、甚大な難局に立ち向かう日本人への敬意と日本復興に向けての引き続く支援の意図が述べられました。スピーチの後、出席者は、復興写真及び当地のクリエイティブ大学学生有志による作品を観覧しました。
第2部の防災庁との共催による、「地震・津波:日本とポルトガルの経験」と題した防災セミナーには約150名が参加されました。このセミナーでは、日本側より、東京大学総合防災情報研究センターの田中淳所長(教授)が、ポルトガル側より、カルロス・ソウザ・オリヴェイラ リスボン工科大学教授が講演されました。田中教授は、昨年の大震災・津波での経験を交えながら、我が国の地震警報・予報伝達を中心とする防災システムにつき、分かりやすく説明されました。オリヴェイラ教授からは、1755年のリスボン大地震を中心とする話がありました。
東日本大震災に対し、在留邦人の皆様をはじめ、各国政府、民間団体等から頂いた数多くの支援に改めて感謝申し上げます。
四宮大使挨拶 |
ダーヴィラ内務副大臣挨拶 |
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復興写真展(1) |
復興写真展(2) |
【与党・社会民主党(PSD)の党大会におけるコエーリョ党首(首相)の演説】
与党・社会民主党(PSD)の第34回党大会が開催され、コエーリョ党首が再選(任期2年)、25日に閉幕スピーチを行いました。同党首は、好調な輸出を背景とする経常収支の改善等の財政再建に関する取り組み及び実績に言及した他、改革に伴う犠牲の公平性を強調しつつ、野党はじめ社会各層との対話を通じて引き続き諸改革に取り組む姿勢を示しました。
【2011年のGDP成長率(改定値)】
国立統計院(INE)は、2011年のGDP成長率(改定値)に関し、先月の速報値(▲1.5%)から0.1ポイント下方修正を行い▲1.6%と発表しました。マイナス成長の主な要因としては、家計最終消費支出及び投資を始めとする内需の冷え込み(▲6.2%)が挙げられています。
【ポルトガル労働者総連盟(CGTP/IN)(共産党系労組)によるゼネスト実施】
労働市場改革案(第107号参照)に抗議する目的で、当国最大労組CGTP/IN主導によるゼネストが22日に実施(昨年6月のコエーリョ政権発足後3回目)され、地下鉄等の一部公共交通機関に影響が出ました。当地各紙報道によると、動員率は前回(昨年11月)より低く、抗議行動も小規模に終わりました。アルメニオ・カルロスCGTP/IN書記長は、就任後初めてのゼネストを成功裏に実施できた旨発言しましたが、主要紙社説では、同労組の弱体化及び影響力の低下が指摘されています。
【新井公使の日系企業訪問:双日ベラルト社・タングステン鉱山】
16日、新井公使はカステロ・ブランコ県コヴィリャン市において双日ベラルト社がタングステンの開発生産を行うパナスケイラ鉱山を訪問しました。当国は欧州の中では鉱物資源が豊富で、この鉱山の歴史も非常に古く創業は100年以上も前に遡りますが、2007年より双日ベラルト社が運営しています。タングステンは工業的重要度の高いレアメタルの一つで、特定地域に偏在しており世界需要の8割を中国が供給、その安定確保は日本の経済安全保障上大変重要です。
鉱脈の説明を受ける新井公使(右) |
タングステン精鉱 |
【エネルギー分野におけるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とポルトガル政府との協力合意文書(Letter of Intent)署名】
13日、再生可能エネルギーやスマートコミュニティ等のエネルギー分野における技術協力に関し、羽藤秀雄NEDO副理事長とカルロス・オリヴェイラ経済雇用省副大臣(イノベーション担当)との間で合意文書(LOI)の署名が行われました。本年1月に訪日し、今次署名式にも出席したアントニオ・コスタ・リスボン市長は、「当市が世界最良の技術を享受し、効率的なエネルギー活用及び温室効果ガスの排出低減を実現する都市となる機会」と述べました。なお、同件については、当地週刊「エスプレッソ」紙(16日付)でも報道されました。
署名後握手を交わすオリヴェイラ副大臣と羽藤副理事長 |
【2012リスボン国際観光フェアへの出展】
2月29日~3月4日、リスボン国際見本市会場(FIL)において「2012リスボン国際観光フェア」が開催されました。当館では「日本スペース」を設け、当国並びに近隣諸国の日系企業・関連機関とともに日本の観光PR及び各種文化事業を行いました。本年は、日本の「復興」及び東北の魅力をPRするため、被災地である同地方の自然や観光地の写真をパネルにして展示しました。また「日本スペース」には、サントス・ペレイラ経済雇用大臣も来場し、鏡割りに参加されました。
鏡割りを行う |
日本酒試飲・あられ試食 |
|
毎年人気の高い書道による名前書き |
日本観光PRの様子 |
(2)広報・文化班からのお知らせ
【写真展「Jardins Japoneses」】
ポルトガルの写真家グループ“Equivalentes - Associação Cultural”の主催により、以下の日程でJosé Reis氏による写真展「Jardins Japoneses」が開催されています。詳細については下記をご参照下さい。
日時:3月8(木)~4月7日(土)
火曜~金曜 17:00~20:00 土曜 15:00~19:00
会場:Av. Almirante Reis 74, Lisboa
【欧州文化首都イベント「琴とフルートのコンサート」】
2012年の欧州文化首都に指定されたギマランエス市において、以下の日程でNaoko Kikuchi氏とTeresa Matias氏による琴とフルートのコンサートが開催されます。詳細については下記をご参照下さい。
日時:4月23(月) 21:30~
会場:Igreja da Colegiada de Guimarães
問い合わせ先:bilheteira@guimaraes2012.pt
URL:http://www.guimaraes2012.pt/index.php?cat=191&item=28788
【ジャパン・フェスタ開催決定のお知らせ】
昨年10月に第1回を開催したジャパン・フェスタを本年は、「リスボン祭り(Festas de Lisboa 2012)」の一環として開催することになりました。
今後、当館ホームページ等で随時お知らせしていく予定です。
日時:6月2日(土)
会場:ベレン地区 日本公園
住所:Rua Dr. Lopo de Carvalho, 4369-006 Porto
問い合わせ先:213 110 560 / cultural@embjapao.pt (大使館広報文化班)
(3)領事班からのお知らせ
【2012(平成24)年度の領事手数料について】
4月1日より領事手数料が下記のとおり改定され、4月1日以降当館にて申請される旅券・証明書等については、改定後の手数料となりますのでご注意ください。
なお、3月31日までに申請された旅券等につきましては、昨年度(2011(平成23)年度)の手数料となります。
主な手数料は次のとおりです。
(2012(平成24)年度手数料)
1.旅券関係 |
( )は、昨年度手数料 |
|
10年有効旅券の発給 |
143,00 |
(133,00)ユーロ |
5年有効旅券の発給 |
98,00 |
( 92,00)ユーロ |
〃(12歳未満) |
54,00 |
( 50,00)ユーロ |
旅券の記載事項の訂正 |
8,00 |
( 8,00)ユーロ |
旅券の査証欄の増補 |
22,00 |
( 21,00)ユーロ |
帰国のための渡航書の発給 |
22,00 |
( 21,00)ユーロ |
2.各種証明関係 |
||
在留証明 |
10,50 |
( 10,00)ユーロ |
出生、婚姻、戸籍関係証明 |
10,50 |
( 10,00)ユーロ |
翻訳証明 |
39,50 |
( 36,50)ユーロ |
署名証明 |
15,00 |
( 14,00)ユーロ |
在留届出済証明 |
19,00 |
( 17,50)ユーロ |
【E-mail登録のお願い】
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【在留届に関するお願い】
近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を元に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。
当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。
このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国に転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。
また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。
(4)その他
【当館領事業務へのご意見募集】
当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですのでご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。