大使館便り第110号(平成24年5月)

平成24年5月2日

平成24年 5月 2日
在ポルトガル日本国大使館

 

1.四宮大使からのメッセージ

 

5月、少々肌寒い日が続き、季節が逆戻りしたかような最近のリスボンです。当地のことわざでは、「4月は雨が多い(Abril, água mil)」と言うそうですが、先月は晴天の合間に激しい雷雨や春雨がよく見られました。水不足の心配は遠のき、農業関係者も一安心のようです。しかし、例年だとそろそろ開花する街路樹のジャカランダには、まだ青紫の花は見えません。

 

 

4月25日は、1974年の民主革命の記念日です。昨年は選挙中で取りやめとなった議会での記念式典も、今年は例年通り行われ、外交団も招待されました。

式典では、各党代表のあと大統領が演説しました。主要なテーマは現下の経済危機対策についてです。最大野党の社会党は、緊縮策だけでは失業が増大するばかりで、弱者保護や成長政策にも配慮すべしとの論調でした。また、大統領の演説も、この1年しばしば注目された政府への注文や批判ではなく、失業問題などに懸念を示しつつも、ポルトガルの長所を例示しながら、国民に団結して困難を乗り越えよう訴えるものでした。

前政権(社会党)が国際的な財政支援を受ける方針を表明してから既に1年余が経過しました。その間、総選挙で国民の洗礼を受けた現政権(社民党と民衆党の連合政権)が、議会での安定多数を背景にこの方針を引き継ぎ、財政支援の条件となるトロイカとの政策合意を基礎とする政策を進めてきました。野党となった社会党も、これまでのところ正面からの反対は自制し、また世論の動向も、公的債務問題の深刻さへの理解や穏健な国民性の故に、これを受忍してきたのがこの1年です。

先月も、「EU財政条約」(EU各国が自国の財政規律について、憲法などで目標数値まで約束するもの)を、社会党もほぼ賛成する形で、EU諸国の中で最初に批准したのがポルトガルでした。先月、英国の新聞「Financial Times」が報じたポルトガル経済の特集でも、この国の緊縮政策が経済成長を阻害するリスクは認めつつも、現行の政策と国内の努力を評価したことが話題となりました。

他方、失業や社会福祉の面などで国民の負担が増大する中、社会党としても与党批判を強めるべきとの議論も増えてきています。特に、財政規律や緊縮策と成長政策とは両立しがたい面があり、政策の重点をどちらに置くかは、与野党間で対立が深まりつつあるように思われます。さらにこの問題は、EU各国の経済政策上の論点にもなっていて、今後さらに大きな議論になると思われます。今週末のフランスの大統領選挙の結果さえ、当国でのこの議論に微妙な影響を及ぼすかもしれません。

 

さて先月、地方訪問の一環として、当国中西部の「フンダオン」(Fundão)という人口3万足らずの町を訪問してきました。3月末から4月始めにかけて、この小さな谷間の町の周囲には、見渡す限りに満開のさくらの景観が広がります。日本と桜を縁に交流を深めたいとの市長のご意向で、訪問させて頂きました。

この町の盆地状の地形が果物の生産に適した気候を生み、当国のサクランボの半分はこの地で生産されるそうです。さらに、早いものは4月末から収穫が始まり、これは欧州でも一番の早生(わせ)のサクランボとして珍重されているとのことでした。

市役所の式典では、地元の料理学校で開発したサクランボを材料にした各種の飲み物やお菓子などを供され、また郊外のさくら畑では、地元の音楽学校の生徒が満開の桜林の中で小音楽会まで開くほどの歓迎ぶりでした。来年の桜の季節には、是非日本の方々にお花見に来て頂きたいとのことでした。

ポルトガルの小さな町で、美しいさくらの景観に囲まれ、人情味あふれる人々に接して、この国の素晴らしさを改めて噛み締める一日でした。

 

皆様におかれては、時節柄、ご自愛のほどをお祈り申し上げます。

 

 

 

2.大使館からのお知らせ

 

(1)総政務・経済班からのお知らせ

 

【財政協定の批准】

 

3月1~2日に開催されたEU首脳会議で、英国とチェコを除く25ヵ国が署名した「財政協定」(経済通貨同盟の安定・協調・ガバナンスに関する条約)(注)について、同13日、当国議会において、連立与党(社会民主党(PSD)・民衆党(CDS/PP))及び最大野党・社会党(PS)の賛成により批准されました。同条約を批准するのは、署名国の中でポルトガルが初めてです。

 

(注)財政均衡ルール(一般政府予算の構造的財政赤字及び公的債務を各々対GDP比0.5%、60%以内等とする)を憲法もしくは同等の法律に規定し、違反した場合には自動的に是正措置が発動されるメカニズムを導入する条約。

 

 

【トロイカ調査団による第3回四半期定期評価作業に関する報告書】

 

2月15~27日に実施されたトロイカ調査団による第3回四半期定期評価作業について、欧州委員会(EC)及びIMFは各々3日と5日に詳細な報告書を公表しました。両報告書とも、ポルトガルの財政再建状況に概ね肯定的評価を与えていますが、特に、IMF報告書では、当初予測を上回る失業率の深刻化を受けて、2013年9月の市場復帰に係るリスクは依然として否定できないと懸念を表明しています。

 

 

【2月の失業率】

 

ユーロスタット(EU統計局)は欧州各国における2月の失業率を発表し、ポルトガルは過去最高となる15.0%(前月比0.2ポイント増)となりました。また、25歳以下の若年層失業率も同様に記録更新となる35.4%(前月比0.3ポイント増)となっています。直近3カ月と前年2月の失業率推移(%)は、下表のとおりです。

 

 

  12月

  1月

  2月

 前年2月

ポルトガル

 14.6

 14.8

 15.0

 12.3

ユーロ圏

 10.6

 10.7

 10.8

 10.0

欧州連合(EU)

 10.0

 10.1

 10.2

  9.5

 

 

【京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授による講演会】

 

3月30日,オエイラス市のグルベンキアン科学研究所において,京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授による講演会「iPS Cell Research: Present and Potential」が開催されました。本講演会は我が国外務省の専門家交流事業として実施されたもので,同研究所の研究者・学生及び一般の参加者計約160人が参加しました。江藤教授は,iPS細胞が同研究所の山中伸弥教授により作製された経緯を説明した後,iPS細胞を利用して血小板等を作製する技術を確立するための自己の研究について説明し,日本の再生医療研究のレベルの高さを印象づけました。

 

 

講演する江藤教授

 

熱心に講演を聴く参加者

 

 

 

(2)広報・文化班からのお知らせ

 

【「Dia do Japão」の開催】

 

Vila Nova de Gaia市のEscola Secundária de Inês de Castro校において、日本食、アニメ、コスプレ大会、武道、影絵、盆栽、カラオケ等をテーマとした日本関連イベントが開催されます。詳細については、下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:5月5日(土) 11:30~19:00

会場:Escola Secundária de Inês de Castro

住所:Rua Quinta do Fojo, Canidelo, 4400-658 Vila Nova de Gaia

問い合わせ先:itabashihidetaka@yahoo.co.jp

 

 

【「Festa do Japão 2012」の開催】

 

ベレン地区の日本公園において、昨年に続き、日本文化紹介イベント「JAPAN FESTA 2012」を開催します。生け花、折り紙、書道、俳句、コスプレ、武道演武、日本食販売他様々な催しが予定されています。また,本年は和太鼓,三味線も登場する予定です。詳細については、下記までお問い合わせ下さい。プログラムに関する情報は随時大使館ホームページにてお知らせします。

 

日時:6月2日(土) 16:00~23:00

会場:日本公園(Jardim do Japão)

住所:ベレン地区、Museu de Arte Popular隣

入場料:無料

問い合わせ先:213 110 560 / cultural@embjapao.pt(大使館広報文化班)

         大使館ホームページ

 

 

 

 

(3)領事班からのお知らせ

 

【海外へ渡航する皆様へ(海外で注意すべき感染症について)】

 

これから夏に向け、多くの方が海外へ渡航されることと思いますが、海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適な旅行となるよう、海外で注意すべき感染症及びその予防対策について、以下のとおりお知らせ致します。

感染症にかからないようにするためには、感染症に対する正しい知識と予防方法を身につけることが重要です。渡航先や渡航先での行動によって異なりますが、最も感染の可能性が高いのは、食べ物や水を介した消化器系の感染症です。ポルトガルでは発生していないような、動物や蚊・ダニなどが媒介する感染症が海外で流行している地域もあり、注意が必要です。また、国際保健機関(WHO)が排除又は根絶を目指している麻疹(はしか)及びポリオは、諸外国では未だに流行しています。

海外渡航を予定される方は、渡航先での感染症の発生状況に関する情報を入手し、予防接種が受けられる感染症については、余裕をもって相談しておくなど、適切な感染予防に心がけてください。

また、感染症には潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が長いものもあり(数日から1週間以上)、帰国後しばらく経過してから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、飲食状況、渡航先での行動、家畜や動物との接触の有無などについて必ず伝えてください。

 

感染症等の詳細は、下記のホームページをご参照ください。

 

厚生労働省検疫所(世界各地の感染症発生状況)

 

 

国立感染症研究所 感染症情報センター(感染症別の詳細情報)

 

 

外務省海外安全ホームページ(感染症関連情報)

 

 

外務省ホームページ(世界の医療機関等情報)

 

 

【E-mail登録のお願い】

 

インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録ください。

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【在留届に関するお願い】

 

近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。

当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。

 

このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。

 

また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。

 

 

 

(4)その他

 

【当館領事業務へのご意見募集】

 

当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。