大使館便り第114号(平成24年9月)

平成24年9月3日

平成24年 9月 3日
在ポルトガル日本国大使館

 

1.四宮大使からのメッセージ

 

9月、リスボンでは、少々湿度もある残暑が続いています。それでも、首都の南を流れるテージョ川に日中とつぜん冷気が遡ってきて、川面に濃霧を生じさせることも幾度かありました。こんな時、川を航行する船の汽笛に、もの悲しい秋の気配を感じることもあります。夏期休暇の季節のため、先月は市内の交通が一段と少なくなっていました。ポルトガルでは、今月から新学期です。また市内に喧噪が戻るのも、もうすぐでしょう。

 

先日、リスボンの東から南に広がるアレンテージョ地方の経済事情を視察する機会がありました。この地方は、面積でポルトガル全体のほぼ三分の一ですが、人口は全体の約5%、一人当たりGDPも平均よりかなり低く、過疎と高齢化が進む地域です。太陽に恵まれながら雨量が少なく、伝統的な農業は近代化が遅れています。このため、水資源を安定的に確保・供給し、農業の近代化と拡大、クリーン・エネルギーの開発、さらに農産品加工業や観光業の育成をめざす、大規模な国家プロジェクトが進行しています。

この「アルケバ計画」では、グァディアナ川に水域面積が当国最大の「アルケバ・ダム」等いくつかのダムを造り、既に2010年から水資源の貯蓄と供給を開始しました。(最大水量4150ヘクトメートル立方)。灌漑システムの整備で、既に6万ヘクタールの農地が灌漑可能となり、現在も拡張計画を進めているそうです。また、1万平方キロの地域で生活用水や工業用水が利用可能となりました。

「アルケバ・ダム」に設置された発電力260MWの「水力発電所」は、今後520MWまで増強可能で、そうなれば国内第二の規模になるそうです。さらに、道路網や空港の建設による物流インフラの整備、モデル農業の普及、観光開発など地域の総合的開発計画は、「アルケバ開発・インフラ整備公社(EDIA)」が中心となって、着々と進んでいるようです。

この開発計画の成果として、高生産、高品質の近代農業がこの地域にも徐々に拡大しています。訪問したオリーブ油の製造企業では、オリーブ果の生産拡大で成果を上げており、さらなる拡大も計画していました。食用ブドウの生産会社でも、タイ人の出稼ぎ労働者まで雇い、大規模な生産管理、出荷作業を行っていました。大手のワイン生産業者も、灌漑設備の充実で大いに助かっていると言っていました。

「アルケバ計画」の現地視察は、農業大臣からの強い要請で実施しました。大臣を始め関係者は、潜在力の大きいアレンテージョ地方の農業、観光、農産品加工、インフラ整備などに、日本からの投資を期待すると表明しています。現下の経済危機の影響は免れないとしても、地の利を生かしたこの政策が着実に成果をあげているのも間違いなく、この国の将来のために大変心強いものでした。

 

先月初め、南島原市の「平成遣欧少年使節」として中学生8名が、市長や市の関係者の引率でエヴォラ市を訪れました。同市の「口之津港」に450年前、ポルトガル人が来港したことを記念する行事の一環として、「天正少年使節」の遣欧の道を尋ねて来訪したものです。この機会に、彼らを迎えたエヴォラ市長と南島原市長との間で、今後の交流についても話し合いが行われました。古くて新しい日本とポルトガルの交流の歴史に、新たな一章が書き加われるよう、大使館としても両市の交流を支援していきたいと考えています。

 

残暑厳しき折から、皆様にはご自愛のほどをお祈り申し上げます。

 

 

 

2.大使館からのお知らせ

 

(1)総政務・経済関係

 

【コエーリョ社会民主党(PSD)党首(首相)による同党支持者集会における演説】

 

8月14日、コエーリョPSD党首(首相)は、当国南部アルガルヴェ地方のクアルテイラで開催された同党の支持者集会で演説を行いました。コエーリョ党首はその中で、ポルトガルは今や危機を脱しつつあり,来年には経済を安定化させ,回復に向けた準備をする旨言及し、トロイカ合意で定められた財政赤字目標を達成するため、夏期及びクリスマス休暇手当の廃止に相当する代替案(注)の重要性について述べました。

 

(注)政府は、本年度予算から公務員と年金生活者を対象に、夏期及びクリスマス休暇手当の支給廃止を実施していますが、7月5日に憲法裁判所は同政策について違憲判決を下しました。本年分に関しては既に予算執行中であることから適用外となり、政府は来年度予算案に向け代替案を練る必要があります。

 

 

【第2四半期のGDP成長率(速報値)及び失業率】

 

8月16日、国立統計院(INE)は第2四半期のGDP成長率(速報値)について、前期比▲1.2%、前年同期比▲3.3%と発表しました。INEによると、個人消費と投資の冷え込みに加えて、輸出の減速もマイナス成長の要因と分析されています。

 

同日、INEは第2四半期の失業率に関し、1983年第2四半期の調査開始以来で最悪となる15.0%を記録、失業者総数は82万6900人(前年同期比22.5%増)に達したと発表しました。

 

 

【トロイカ調査団による第5回四半期定期評価作業の開始】

 

8月28日から、欧州委員会(EC)、欧州中央銀行(ECB)、IMFの専門家らで構成されるトロイカ調査団がリスボンにおいて、第5回四半期定期評価作業を開始しました。当地各紙報道によると、本年の財政赤字目標(対GDP比)4.5%の達成は困難との見通しがあることから、政府とトロイカ調査団の交渉の行方が注目されます。今回の評価作業もこれまで同様2週間かけて実施される予定です。

 

 

 

(2)広報・文化関係

 

【第6回リスボン国際ホラー映画祭「Motelx」】

 

下記の日程で、リスボン国際ホラー映画祭「Motelx」が開催されます。同映画祭では、国際交流基金の助成により、日本のホラー映画も上映されます(「ヴァンパイア」(岩井俊二監督、2012年)、「レッド・ティアーズ」(辻本貴則監督、2012年)、「亡霊怪猫屋敷」(中川信夫監督、1958年)、「東海道四谷怪談」(中川信夫監督、1960年)、「怪異談 生きてゐる小平次」(中川信夫監督、1982年))。チケット購入等詳細は、下記までお問い合わせください。

 

日時:9月12日(水)~16日(日)

会場:Cinema São Jorge

住所:Av. da Liberdade 175, 1250-141 Lisboa

問い合わせ先:213 103 400

URL:http://www.motelx.org/ , http://www.cinemasaojorge.pt/

 

 

【IBERANIME イン・ポルト】

 

マンガの展示・ワークショップ、ビデオゲーム、コスプレ、アニメ・マンガコンクールなど広く日本のポップカルチャーをテーマとするイベント「IBERANIME no Porto」が以下の通り開催されます。プログラム・チケット購入等詳細については下記連絡先にご確認下さい。

 

日時:10月13日(土)~14日(日)

会場:Multiusos de Gondomar

住所: Av. Multiusos, 4420-015 Gondomar, Porto

問い合わせ先:info@iberanime.com, 21 426 97 10 (Tel.)

URL:http://www.iberanime.com/pt/

 

 

【俳句作品募集のご案内】

 

リスボン市では、「リスボン」をテーマとした句集("Haiku - 35 poemas a Lisboa(リスボンを詠む)")の作成とその発表会を企画しており、日本愛好家のポルトガル人とポルトガル在住の日本人を対象に、9月30日まで俳句作品を募集しています。日本語のみによる作品も応募可能です(事務局がポルトガル語に翻訳します)ので、奮ってご応募ください。11月頃、リスボン市による作品発表会が行われる予定です。詳細については、下記までお問い合わせ下さい。

 

 

 

【「第17回カナガワビエンナーレ国際児童画展」作品募集】

 

神奈川県では、世界各地からこどもたちの絵画を募集し、カナガワビエンナーレ国際児童画展を2年に一度、開催しています。第17回展については2013年7月~8月に開催を予定しており、募集要項は以下の通りとなっています。詳細は下記までお問い合わせください。

 

応募資格:神奈川県に在住・通学する満4歳以上15歳以下の子供
        及び、海外在住の満4歳以上15歳以下の子供(国籍不問)

作品受付時間:2012年9月1日~11月30月

送付先:神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷1-2-1 神奈川県立地球市民かながわプラザ内

公益社団法人青年海外協力会

第17回カナガワビエンナーレ国際児童画展事務局

問い合わせ先:k-biennial@earthplaza.jp

 

 

【第3回日本文化展「Um Espaço Japanesque」(日本関連コレクションの展示)】

 

ポルト在住の袖林優子氏による「彫る、塗る、焼く、織る」をテーマとした日本関連コレクションの展示が以下の通り開催されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:9月4日(火)~9月29日(土)10時~18時(休館:日・月曜日)

会場:Biblioteca Municipal Almeida Garrett, Jardins do Palácio de Cristal

住所:Rua de D. Manuel II, Porto

入場:無料

問い合わせ先:229 721 408 / 938 376 024

 

 

【「いま、日本のアートをつむぐ-てわざ・こまやか」】

 

西川肇一氏企画、日本人アーティストのプロジェクト「いま、日本のアートをつむぐ-てわざ・こまやか」が下記の通り開催されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:9月22日(土)~10月20日(土)(木・金・土の15:00~19:00)

※レセプション:9月22日(土)16:00~20:00

会場:Por Amor à Arte Galeria

住所:Rua de Miguel Bombarda 572, 4050-379 Porto

問い合わせ先:226 063 699 / 914 622 200 (Tel.)

poramoraartegaleria@hotmail.com / choartich@yahoo.co.jp

URL:http://www.facebook.com/poramoraarte.galeria.5

http://facebook.com/choichi.nishikawa

 

 

【講演「マンガから現代美術へ-震災以降のアートのゆくえ」】

 

上記事業の関連イベントとして、青木聖吾氏による講演「マンガから現代美術へ-震災以降のアートのゆくえ」が下記の通り開催されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:2012年9月24日(月)(16:00‐18:00)

会場:ミーニョ大学 人文科学部講堂

(Universidade do Minho, Auditório do Instituto de Letras e Ciências Humanas)

住所:Instituto de Letras e Ciências Humanas (ILCH),

Campus de Gualtar, 4710 - 057 Braga

問い合わせ先:253 604 170 253 604 171/2/3 (Tel.) 253 601 669 (Fax)

sec@ilch.uminho.pt / t_takamatsu@ilch.uminho.pt

choartich@yahoo.co.jp

URL:http://www.ilch.uminho.pt/

http://facebook.com/choichi.nishikawa

 

 

【デモンストレーション・ワークショップ「オフセットリトグラフの技法、およびモノタイプへの展開」】

 

同じく上記事業の関連イベントとして、西川肇一氏による公開デモンストレーション及びワークショップ「オフセットリトグラフの技法、およびモノタイプへの展開」が下記の通り開催されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:9月17~21日のうち2日間

(現在調整中であり、詳しくは下記問い合わせ先にご確認下さい)

会場:ポルト大学 美術学部アトリエ

(Atelier da Faculdade de Belas Artes da Universidade do Porto)

住所:Av. Rodrigues de Freitas 265, 4049-021 Porto

問い合わせ先:225 192 400 / 225 367 036 (Tel.)

scc@fba.up.pt / choartich@yahoo.co.jp

URL:http://sigarra.up.pt/fbaup

http://facebook.com/choichi.nishikawa

 

 

【「日本語能力試験」の開催】

 

国際交流基金と日本国際教育支援協会の主催による「日本語能力試験」(JLPT)が下記の要領で実施されます。詳細については下記までお問い合わせ下さい。

 

実施日時:12月2日(日)

実施会場:Faculdade de Letras da Universidade do Porto(ポルト大学文学部)

住所:Via Panorâmica, s/n, 4150-564 Porto

願書提出期間:9月17日(月)~10月9日(火)

問い合わせ先:日本語能力試験実施委員会又は大使館広報文化班

 

 

 

(3)領事関係

 

【大学入試センター試験受験案内】

 

平成25年度大学入試センター試験が、明年1月19日(土)、20日(日)に行われます。(独)大学入試センターのサイトにて、受験案内など試験に関する情報が公開されていますので、受験を希望される方、詳細について確認されたい方は、当該サイトをご覧ください。

 

 

【E-mail登録のお願い】

 

インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録ください。

E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取りになれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。

 

 

【在留届に関するお願い】

 

近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。

当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。

 

このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。

 

また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。

 

 

 

(4)その他

 

【当館領事業務へのご意見募集】

 

当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。