大使館便り第115号(平成24年10月)

平成24年10月2日

平成24年10月 2日
在ポルトガル日本国大使館

 

1.四宮大使からのメッセージ

 

10月、リスボンでは厳しい残暑が先月の前半まで続きましたが、雨の日が数日あって、今ではすっかり秋の気配がただよう季節となりました。

しかし、この爽やかな気候とは裏腹に、当国では3週間余り、政府の新たな緊縮政策をめぐって大規模な抗議行動が発生し、政治状況が揺れています。

 

きっかけは、政府が発表した追加的な緊縮政策でした。社会保障の原資となる「単一社会保障税」(TSU)について、明年から労働者の負担分を引き上げ(給与の11%を18%へ)、企業の負担分を引き下げる(同23.75%から18%へ)というものです。さらに、先般違憲判決のあった公務員の夏・冬両方の期末手当の廃止策に代えて、どちらか一方のみを廃止すること、さらに所得税などの増税の方針も含まれていました。

トロイカの財政支援と緊縮策が始まって1年余、厳しい負担に耐えるポルトガル人の姿は、印象的でした。しかし今回は、充分な根回しも無く発表された追加負担の厳しさが、国民の猛烈な反発を招いています。実際、週末ごとに大規模なデモが続き、約40もの都市で数十万人を超える参加者のあった最初のデモは、1974年の民主化革命以来の規模のものとなりました。

昨年は、緊縮策を容認し政府の予算案に反対しなかった最大野党の社会党も、今回はこの施策に強い反対を表明しています。国会でかろうじて多数を占める連立与党の間でも、民衆党は増税に異論があると報道されました。

結局、「社会保障費」の負担問題は、大統領が招集した「国家評議会」で8時間もの討議の末、今月の予算案策定までに再検討することが決まりました。

 

この間、当国の緊縮策の実施状況についてトロイカ調査団による定期審査の結果が発表されました。ここでは、実施状況が評価されるとともに、ポルトガルの厳しい経済状況を勘案し、当国政府の希望に沿って、財政赤字の目標数値やその期限について条件の緩和が発表されました。

しかし、右条件緩和の前提になっていると見られる今回の追加施策が見直しになったことで、コエーリョ政権はトロイカと国内世論との板挟みに陥った状況です。国民の不満が一線を越えたように見える世論の動向とともに、この問題の決着がどうなるのか、目が離せない状況です。

 

先月は日本に一時帰国し、ポルトガルにゆかりの深い九州の都市を訪問してきました。この機会に、大分市長、天草市長、人吉市長、南島原市長にそれぞれお会いし、今後の当国との地方交流について意見交換を行うことができました。

また、各地の文化財を視察し改めて長い歴史を有する日本各地の魅力を垣間見ることもできました。例えば人吉市では、1200年の歴史を持つ国宝の「青井阿蘇神社」のような歴史遺産が、日常生活の中に存在する姿に感銘を受けました。また、同市の「うんすんカルタ」は、16世紀末にポルトガル人がもたらした「南蛮カルタ」を江戸時代に改良したトランプのような遊びですが、当時の文化を今に伝えるものとして、大変興味深く拝見しました。さらに、南島原市の「原城址」では、「島原・天草一揆」(1637-8年)の犠牲者の遺骨が今でも出土するとのことです。日本史の節目となった騒乱の史跡を訪ね、当時の悲劇に思いを馳せるとともに、現在も中東などで続く「宗教と政治の問題」に改めて思いをめぐらせた次第です。

 

気候変動の影響か、ポルトガルでも日本でも、今年はとりわけ暑い夏が長く続いたように思います。皆様には、時節柄ご自愛のほどをお祈り申し上げます。

 

 

 

2.大使館からのお知らせ

 

(1)政治・経済関係

 

【トロイカ調査団による第5回四半期定期評価作業の結果】

 

9月11日、ガスパール財務相は、8月28日から実施されていたトロイカ調査団による第5回四半期定期評価作業の結果について記者会見を行い、財政赤字目標の緩和(本年は対GDP比4.5%→5.0%、2013年は同3.0%→4.5%、2014年は同2.5%)を発表しました。但し、同大臣は,金融支援の枠組み(支援総額780億ユーロ)に変更はなく、2013年9月の市場復帰目標も維持される旨述べました。また、本年のGDP成長率は▲3.0%で据え置きとなる一方、2013年については0.0%→▲1.0%へ下方修正されました。

 

 

【全国主要都市における大規模抗議デモ】

 

9月15日、全国約40の主要都市において、同7日に発表された労働者負担分の単一社会保障税(TSU)引上げ(現行11%→18%)に対する抗議デモが実施されました。このデモは、フェイスブックを通じて招集され、約50万人の市民が参加し、1974年の民主化革命後で最大規模となりました。リスボン市ではIMF事務所にトマトやビール瓶、爆竹が投げ込まれた他、夜遅くには共和国議会前で警官隊との小競り合いが発生する等、数名の逮捕者が出ましたが、全般的には従来通り、比較的平穏かつ秩序ある形で行われました。

 

次いで、9月29日には、当国最大規模の共産党系労組CGTPが抗議デモを行い、老若男女の幅広い層の参加者がコメルシオ広場(財務省前)を埋め尽くしました。アルメニオ・カルロス同書記長は、政府の緊縮策を厳しく非難すると同時に、10月3日はゼネスト実施に向けた協議を行う旨明らかにしました。

 

 

【カトリカ大学による世論調査】

 

9月20日、「ディアリオ・デ・ノティシアス」紙はカトリカ大学による世論調査(調査期間同15~17日)の結果を発表し、最大野党・社会党(PS)がコエーリョ政権発足(2011年6月)以来初めて与党・社会民主党(PSD)の支持率を上回り、31%(前回6月は33%)となりました。一方,PSDは前回から12ポイントもの大幅減となる24%で第2位に転落した他、現在の政府の働きについても、「とても悪い」と「悪い」を合わせて77%(同65%)に達する等、長引く不況と厳しい緊縮策に対する国民の不満を反映する結果となりました。

 

 

【国家評議会の開催】

 

9月21日、カヴァコ・シルヴァ大統領は、「ユーロ圏危機に対する欧州の対処とポルトガルの状況」との議題で,昨年10月以来となる国家評議会(注)を開催しました。約8時間に及ぶ本評議会終了後の翌22日未明に発表された大統領府の声明では、トロイカ合意履行のため、政治的・社会的対話を重視すると共に、犠牲を配分する上での平等性と正義を確保する必要性が強調されました。また、単一社会保障税(TSU)の税率変更策については、政府がその代替案について企業連合及び労組と協議する旨合意したこと、そして、政府を支える連立与党間の軋轢は解消された点が明らかにされました。

 

(注)国会議長,首相,憲法裁判所長官,歴代大統領,自治州知事,議会が選出する代表等計20名で構成される大統領の諮問機関(憲法により規定)。国政の重要事項につき助言を行うため,大統領が召集します。なお,今次評議会には,単一社会保障税(TSU)代替案についての説明のため,ガスパール財務相が召致され,冒頭で説明を行いました。

 

 

 

(2)広報・文化関係

 

【欧州文化首都イベント「GANBARE」】

 

「欧州文化首都ギマランエス2012」イベントの一環として、下記の通り演劇「GANBARE」が上演されます。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:10月7日(日) 19:30~

会場:Centro Cultural Vila Flor

住所:Avenida D. Afonso Henriques 701, 4810-431 Guimarães

問い合わせ先:253 424 700 / geral@ccvf.pt

URL:http://www.guimaraes2012.pt/

 

 

【欧州文化首都イベント「Youth International in Concert」】

 

「欧州文化首都ギマランエス2012」イベントとして、下記の通り「Youth International in Concert」が行われます。東北から参加のコーラスグループがギマランエスのコーラスと共演します。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:10月7日(日)

会場:Igreja de S. Francisco

住所:Largo de Sao Francisco, 4810-429 Guimarães

問い合わせ先:253 439 850

URL:http://www.guimaraes2012.pt/

 

 

【欧州文化首都イベント「European Eyes on Japan」】

 

「欧州文化首都ギマランエス2012」イベントとして、下記の通り写真展「European Eyes on Japan」が開催されます。ヨーロッパの写真家がレンズを通してみた日本の姿の作品展です。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:10月7日(日)~28日(日)

会場:Paço dos Duques de Bragança

住所:Rua Conde D. Henrique, 4810-245 Guimarães

問い合わせ先:253 412 273

URL:http://www.guimaraes2012.pt/

 

 

【IBERANIME イン・ポルト】

 

マンガの展示・ワークショップ、ビデオゲーム、コスプレ、アニメ・マンガコンクールなど広く日本のポップカルチャーをテーマとするイベント「IBERANIMEイン・ポルト」が以下の通り開催されます。プログラム・チケット購入等詳細については下記連絡先にご確認下さい。なお、会場では、近藤健、木村文香・在ポルトガル日本大使館書記官による日本文化に関する講演も予定されています。

 

日時:10月13日(土)~14日(日)

会場:Multiusos de Gondomar

住所: Av. Multiusos, 4420-015 Gondomar, Porto

問い合わせ先:info@iberanime.com, 21 426 97 10 (Tel.)

URL:http://www.iberanime.com/pt/

 

 

【和道流空手道ヨーロッパ大会の開催】

 

和道流空手道ヨーロッパ大会が10月20日、以下の通り開催されます(ポルトガル空手和道流協会主催)。本大会は2年毎に開かれており、本年はポルトガルでの開催となったものです。20日(15:00~17:00)のセレモニーでは、空手のみならず各種武道の実演、日本人のバレリーナ、ミウラ・ユリナ氏によるデモンストレーション、山岸幸道氏指揮による演奏なども予定されています(入場無料)。詳細については下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:10月20日(土)

会場:Complexo Municipal Desportivo de Almada

住所:Alameda Guerra Junqueiro n.° 35 - Almada

問い合わせ先:rosaumi@gmail.com, 96 877 91 52

URL:http://www.wado-ryu.com.pt/

 

 

【ドキュメンタリー「O Sabor do Leite Creme / The Taste of Crème Brúlée」の上映】

 

当地在住の日本人映画監督、鈴木仁篤氏とRossana Torres氏の共同監督によるドキュメンタリー映画「O Sabor do Leite Creme / The Taste of Crème Brúlée」が第10回リスボン国際ドキュメンタリー映画祭―Doclisboa―において、ポルトガル映画長編部門に 選ばれ、Culturgest(文化団体)において下記の通り上映されます。詳細については下記URLを参照下さい。

 

上映日時・会場:(1)10月25日(木) 19:00~  Culturgest大ホール

(2)10月27日(土) 16:00~  Culturgest小ホール

住所:Edifício Sede da Caixa Geral de Depósitos,

Rua Arco do Cego, Piso 1, 1000-300 Lisboa

URL:http://www.doclisboa.org/2012/pt/edicao/programadetalhe/1655

    http://www.doclisboa.org/2012/pt/edicao/seccoes/613

 

 

【ワークショップ彩の花「Flores às Cores」】

 

スザナ・ドミンゲス氏によるワークショップ「Flores as Cores」が以下の通り開催されます。日本の簪(かんざし)にインスピレーションを得て、様々な材料を使ってイヤリング、針刺し、その他細かな装身具などを作ります。詳細については下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:10月24日(水)

会場:R. Luciano Cordeiro n.° 89 Lisboa

問い合わせ先:susanadomingues@hands-on-hearts.org / 91 025 91 57

参加申込:susanadomingues@hands-on-hearts.org

      もしくは、http://www.hands-on-hearts.org/workshops/inscricao/ から

 

 

【「日本語能力試験」の開催】

 

国際交流基金と日本国際教育支援協会の主催による「日本語能力試験」(JLPT)が下記の要領で実施されます。詳細については下記までお問い合わせ下さい。

 

実施日時:12月2日(日)

実施会場:Faculdade de Letras da Universidade do Porto(ポルト大学文学部)

住所:Via Panorâmica, s/n, 4150-564 Porto

願書提出期間:9月17日(月)~10月9日(火)

問い合わせ先:日本語能力試験実施委員会又は大使館広報文化班

 

 

【Almeida Garrettポルト市立図書館における日本語初級コースの新設】

 

Almeida Garrettポルト市立図書館において、ポルト市在住の袖林優子氏による日本語初級コースが下記の通り開講しました。詳細については以下までお問い合わせ下さい。

 

授業日:毎週土曜日 11:30~13:00

場所:Biblioteca Municipal Almeida Garrett, Porto

対象:16歳以上

申込:bib.agarrett@cm-porto.pt / 22 608 10 00

問い合わせ先:yuko_s_santos@yahoo.co.jp

 

 

【「第17回カナガワビエンナーレ国際児童画展」作品募集】

 

神奈川県では、世界各地からこどもたちの絵画を募集し、カナガワビエンナーレ国際児童画展を2年に一度、開催しています。第17回展については2013年7月~8月に開催を予定しており、募集要項は以下の通りとなっています。詳細は下記までお問い合わせください。

 

応募資格:神奈川県に在住・通学している満4歳以上15歳以下の子供
        及び、海外在住の満4歳以上15歳以下の子供(国籍不問)

作品受付時間:2012年9月1日~11月30日

送付先:神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷1-2-1 神奈川県立地球市民かながわプラザ内

公益社団法人青年海外協力会

第17回カナガワビエンナーレ国際児童画展事務局

問い合わせ先:k-biennial@earthplaza.jp

 

 

【「いま、日本のアートをつむぐ-てわざ・こまやか」】

 

西川肇一氏企画、日本人アーティストのプロジェクト「いま、日本のアートをつむぐ―てわざ・こまやか」が下記の通り開催されています。詳細は下記までお問い合わせ下さい。

 

日時:9月22日(土)~10月20日(土)(木・金・土の15:00~19:00)

会場:Por Amor à Arte Galeria

住所:Rua de Miguel Bombarda 572, 4050-379 Porto

問い合わせ先:226 063 699 / 914 622 200 (Tel.)

poramoraartegaleria@hotmail.com / choartich@yahoo.co.jp

URL:http://www.facebook.com/poramoraarte.galeria.5

http://facebook.com/choichi.nishikawa

 

 

 

(実施報告)

 

【ブログコンクール表彰式】

 

9月25日、日本大使館多目的ホールにおいて、日本をテーマとするブログコンクール「Japão Passado e Presente(日本の過去と現在)」の表彰式が行われました。本コンクールは、日本大使館、全国図書推進委員会(PNL)、学校図書館ネットワーク(RBE)の協力のもと、ポルトガルの小学校高学年及び中・高生が作成した日本をテーマとしたブログを対象に行われ、多数の応募作品のうち、以下の三校の生徒によるブログが入賞しました。

 

Escola Secundária com 2° e 3° Ciclos Prof. Reynaldo dos Santos校
                      (小学校高学年の部:ヴィラ・フランカ・デ・シーラ市)

 

Escola EB 2, 3 El Rei D. Manuel I校 (中学校の部:アルコシェッテ市)

 

Escola Secundária D. Manuel Martins校 (高校の部:セトゥーバル市)

 

入賞作品は、上記受賞校より閲覧できます。

 

 

 

来場者にブログを解説する受賞者

 

受賞者を表彰する藤村臨時代理大使

 
 

受賞者を交えて記念撮影

 

授賞式後談笑する参加者

 

 

 

(3)領事関係

 

【補欠選挙に伴う在外選挙の実施(予定)について】

 

衆議院鹿児島県第3区選出議員の補欠選挙に伴う在外選挙を10月17日(水)に行う予定です。補欠選挙に伴う在外選挙の概要は、こちらをご覧ください。

 

 

【E-mail登録のお願い】

 

インターネットを閲覧することができる方で、まだ当館にE-mailアドレスを登録されていない方は、是非E-mailアドレスをご登録ください。

E-mailを登録していただきますと、大使館便りをE-mailで受け取ることができるほか、イベントの告知や緊急情報等、大使館からの様々なお知らせもE-mailにてお受取りになれますので、E-mailアドレスの登録をお奨めします。

 

 

【在留届に関するお願い】

 

近年、海外で生活する日本人が急増し、このため海外で事件や事故等思わぬ災害に巻き込まれるケースが増加しています。万一、在留邦人の皆様がこのような事態に遭われた場合には、日本国大使館や総領事館は「在留届」を基に皆様の所在地や緊急連絡先又は日本国内の連絡先等を確認して援護活動を行っています。

当館でも、皆様に提出いただいた在留届により連絡先の把握を行い、大使館からの海外危険情報や広報文化活動などの情報提供、緊急時の連絡網整備、安否確認に役立てているところです。

 

このため、ポルトガル国内での転居、日本への帰国、他国への転出等、在留届の届け出事項に変更が生じた後、引き続きこの大使館便りをご覧の方は、速やかにその旨を下記領事班あてにE-mailにてご連絡ください。

 

また、皆様の友人・知人で「ポルトガルに居住しているが、まだ在留届を提出していない方」がおられましたら、届出を行うようご案内ください。

 

 

 

(4)その他

 

【当館領事業務へのご意見募集】

 

当館では、領事サービスの向上を図るため、皆様からのご意見を募集いたしております。どのような些細な事柄でも結構ですので、ご意見・ご要望等があればお気軽に領事班にご連絡ください。