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大使コラム(5月)
5月、少々肌寒い日が続き、季節が逆戻りしたかような最近のリスボンです。当地のことわざでは、「4月は雨が多い(Abril, água mil)」と言うそうですが、先月は晴天の合間に激しい雷雨や春雨がよく見られました。水不足の心配は遠のき、農業関係者も一安心のようです。しかし、例年だとそろそろ開花する街路樹のジャカランダには、まだ青紫の花は見えません。
4月25日は、1974年の民主革命の記念日です。昨年は選挙中で取りやめとなった議会での記念式典も、今年は例年通り行われ、外交団も招待されました。 式典では、各党代表のあと大統領が演説しました。主要なテーマは現下の経済危機対策についてです。最大野党の社会党は、緊縮策だけでは失業が増大するばかりで、弱者保護や成長政策にも配慮すべしとの論調でした。また、大統領の演説も、この1年しばしば注目された政府への注文や批判ではなく、失業問題などに懸念を示しつつも、ポルトガルの長所を例示しながら、国民に団結して困難を乗り越えよう訴えるものでした。 前政権(社会党)が国際的な財政支援を受ける方針を表明してから既に1年余が経過しました。その間、総選挙で国民の洗礼を受けた現政権(社民党と民衆党の連合政権)が、議会での安定多数を背景にこの方針を引き継ぎ、財政支援の条件となるトロイカとの政策合意を基礎とする政策を進めてきました。野党となった社会党も、これまでのところ正面からの反対は自制し、また世論の動向も、公的債務問題の深刻さへの理解や穏健な国民性の故に、これを受忍してきたのがこの1年です。 先月も、「EU財政条約」(EU各国が自国の財政規律について、憲法などで目標数値まで約束するもの)を、社会党もほぼ賛成する形で、EU諸国の中で最初に批准したのがポルトガルでした。先月、英国の新聞「Financial Times」が報じたポルトガル経済の特集でも、この国の緊縮政策が経済成長を阻害するリスクは認めつつも、現行の政策と国内の努力を評価したことが話題となりました。 他方、失業や社会福祉の面などで国民の負担が増大する中、社会党としても与党批判を強めるべきとの議論も増えてきています。特に、財政規律や緊縮策と成長政策とは両立しがたい面があり、政策の重点をどちらに置くかは、与野党間で対立が深まりつつあるように思われます。さらにこの問題は、EU各国の経済政策上の論点にもなっていて、今後さらに大きな議論になると思われます。今週末のフランスの大統領選挙の結果さえ、当国でのこの議論に微妙な影響を及ぼすかもしれません。
さて先月、地方訪問の一環として、当国中西部の「フンダオン」(Fundão)という人口3万足らずの町を訪問してきました。3月末から4月始めにかけて、この小さな谷間の町の周囲には、見渡す限りに満開のさくらの景観が広がります。日本と桜を縁に交流を深めたいとの市長のご意向で、訪問させて頂きました。 この町の盆地状の地形が果物の生産に適した気候を生み、当国のサクランボの半分はこの地で生産されるそうです。さらに、早いものは4月末から収穫が始まり、これは欧州でも一番の早生(わせ)のサクランボとして珍重されているとのことでした。 市役所の式典では、地元の料理学校で開発したサクランボを材料にした各種の飲み物やお菓子などを供され、また郊外のさくら畑では、地元の音楽学校の生徒が満開の桜林の中で小音楽会まで開くほどの歓迎ぶりでした。来年の桜の季節には、是非日本の方々にお花見に来て頂きたいとのことでした。 ポルトガルの小さな町で、美しいさくらの景観に囲まれ、人情味あふれる人々に接して、この国の素晴らしさを改めて噛み締める一日でした。
皆様におかれては、時節柄、ご自愛のほどをお祈り申し上げます。
在ポルトガル共和国大使 四宮 信隆
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